第75話

「──ありがとうございました。テレビの前のファンたちも喜んでいることでしょう」

「黄色い歓声が聞こえてきますね」

「はい。……それでは、本日最後のゲストをお呼びしましょう」

「『シュステーマ・ソーラーレ』のみなさんですっ!」


 一つ前の男性アイドルグループの出番が終わり、MCの俳優とアシスタントの局アナの紹介を受けて彼らの元に進み出る。

 幾つか有るテレビカメラが俺たちの方を向き、撮った映像をお茶の間に流していることだろう。


「どうも、こんばんは」

「こんばんはです」

「こんばんは~」

「「「……私たち、『シュステーマ・ソーラーレ』ですっ!」」」


 初めての、お約束の言葉と可愛いポーズをとる。

 それを見たファンたちは、野太い歓声をテレビの前で上げているはずだ。


「こんばんは。よくいらっしゃいました」

「はい。こんばんは」

「こんばんは」


 まずは、MCと睦美さんに梨奈さんが挨拶を交わす。

 俺の出番は、アシスタントが例大祭の話題を振って人員の交代があったことを紹介してからだ。


「出演は、一ヶ月半ぶりですか?」

「はい。前回は新曲が出た直後でしたね」

「……その間に『シュステーマ・ソーラーレ』さんでは人気投票があり、人の交代もあったそうです」

「そうなんですね。ぜひ、ご紹介頂きたい」

「もちろんです」


 並んでいたリーダーとエースの間が開き、その隙間に俺が現れた。

 新たな超絶美少女の出現に、俺を知らなかった視聴者は目をくぎ付けにしていると思う。


「はじめまして♪ 『シュステーマ・ソーラーレ』、テッラこと萱沼 美久里です♪ よろしくお願いします♪」


 パチパチパチパチ


 鏡の前で何度も練習した挨拶に、仲間やこれまでの出演者と番組スタッフが拍手をしてくれた。

 自分でも滅茶苦茶可愛く思える挨拶で、新たに堕ちてしまった男性たちが多数出たことを確信する。


「よろしくお願い致します、司会の元岡です。萱沼さんは地上波の生放送は初めてということですが、緊張はして……、いらっしゃないようで」

「いえ、流石に緊張していますよ。ただ、あまり表に出ていないらしいですね」

「それは、芸能人として貴重な能力ですね。ガチガチで顔が強張っているかたも多いですから」


 MCと台本通りに会話を交わす。

 一度、リハーサルをしていることもあって何事も無く順調に進む。


「──今後のご活躍を期待しております」

「それでは、『シュステーマ・ソーラーレ』のみなさんに歌っていただきましょう。紹介を、萱沼さん、お願い致します」

「はい。……私が所属してからは初めての披露となります。『Supercluster』、聞いてください」

「ありがとうございます。では、お願い致します」


 俺が曲紹介を終えると、MCの言葉を切っ掛けにスタジオの中心に全員で移動する。

 フォーメーションの自分の位置でポーズをとると、曲が流れるのを待つ。


「……それではお聞きください。新生『シュステーマ・ソーラーレ』による、『Supercluster』……」


 そのMCの言葉が終わると、短いイントロが流れて梨奈さんが口にマイクを寄せる。

 彼女のパートが終わると、いよいよ俺の出番だ。



 +++



「「「幾億の時を超えた光~~~♪」」」


 右手の怪我からくる痛みも笑顔で我慢できるレベルで、歌い終わるとポーズをとって曲が終了するのを待つ。

 暫くすると音が止まり、照明も暗くなっていった。


「CM、入りましたっ!」

「お疲れ様でした~」


 スタッフの言葉に、再び俺たちはMCやアシスタントの元に戻る。

 俺のターンも終わり、今度はCM明けに梨奈さんと知実さんがMCと会話する番だ。

 それからエンディングへと入っていくため、俺のミュージック・ウィンドウでの仕事は実質的に終わりである。



 +++



「はい。お疲れ様でした。明日は久し振りの休日です。羽目を外さずに過ごしてください」

「わかりました」

「本当に久しぶり~」

「例大祭で忙しかったですからね」


 内部グループの『シュステーマ・ソーラーレ』は、明日の日曜日が全休となっている。

 その次の八月最後の日曜日は、大規模なフェス参加が予定されており、月曜からはその練習で多くが占められている。

 個人の仕事があるメンバーは体力的に大変だろう。


 土曜日も同じ音楽フェスの開催日なのだが、その日は『ドワーフ・プラネット』と『セブンス・サテライト』が参加予定だ。

 つまり、のぞみちゃんも明日はお休みというわけである。

 もっとも、彼女と遊ぶ予定があるわけではない。

 のぞみちゃんも例大祭前後から夏休みが終わるまで、大忙しなのは俺と同じだ。

 増して、神様チートが無い彼女は俺以上に苦労するはずである。


 そして二学期が始まれば、ますます忙しくなる。

 流石に義務教育中は仕事量を抑えてくれるということで、想像してたよりは一息つけるみたいだ。

 去年の梨奈さんは特にそんなことがなく大変だったということで、俺たちは配慮されたようである。


 今はエースの梨奈さんがいるから、そこまで俺を酷使する必要も無いのだろう。

 もっとも、高校生になったら覚悟はしておいてと言われているから、高校はまともに通えると思わない方が正解なのかもしれない。


 そんなことを考えながら、藤山さんが運転する車で家まで送られた。

 ダブルエースの一人で中学生の俺はプロダクションから大事にされているようで、送ってくれたことに父や兄たちが感謝していた。

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2025年1月9日 22:00 毎日 22:00

神様チート転生で男性アイドルになろうとしたら、神様チート不本意TS転生だったので女性アイドルになる ナインナインナイン @nine3

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