第66話

「──この結果、第十位の河上 もゆさんは愛称ケレスに。第十一位の七澤 のぞみさんは愛称ハウメアとなりました」

「他の方の愛称は変わりないですな」

「ええ、そうなります。……では、結果発表を続けていきましょう!」

「いよいよ投票数上位、一桁に入りますよっ! みなさんっ!」

「はいっ! これから呼ばれるメンバーは内部グループ『シュステーマ・ソーラーレ』所属となります」

「ここに来られるほどのファンなら、誰が残っているかわかっているでしょうが、順位も気になるでしょうね」

「気になる~~~!!」

「早く発表してぇぇぇ!!」


 らすMCに客席のファンが先を促す。

 BSの生放送があるから、CMや終了時間に合わさないといけないので大変だ。


「わかりました。……それでは、第五回シュステーマ・ソーラーレ例大祭、人気投票第九位は!?」

「第九位は!?」

「……昨年に続いて二度目の九位! 三期生、ネプトゥーヌスこと、北戸きたど 理緒りおさんです!!」

「うおぉぉぉ!!!」

「理緒ちゃ~ん!!!」


 名前を呼ばれたカッコイイ系のメンバーが、中央のスポットライトに進み出る。

 いよいよ、人気投票も終盤を迎えた。



 +++



「……それでは、第五回シュステーマ・ソーラーレ例大祭、人気投票第六位は!?」

「第六位は!?」

「……昨年より一つ上がりましたっ! 二期生、サートゥルヌスこと、清田きよた 涼夏すずかさんです!!」

「涼夏さま~~~!!!」

「きゃぁぁぁ!!!」


 シュス・ソーラ一のカッコイイ系アイドルである、清田さんの名前が呼ばれた。


 九位で呼ばれた北戸さんは男子の人気もあるけど、こちらはほぼ女子からの人気で占められている。

 うちのメンバーからの人気も高いので、勝手にライバル視している相手だ。


 まぁ、彼女は俺のことをそう思ってはいないだろうけど。

 男性からの人気が主の俺とは、ファン層が競合していないのだ。



 +++



 続いて五位までの発表が終わったが、未だに俺の名前が出てこない。


「さて……。終盤になってまいりましたな」

「はい。それでは発表を続けます。……第五回シュステーマ・ソーラーレ例大祭、人気投票第四位は!?」

「第四位は!?」

「……彼女も五年連続! 二期生、ユーピテルこと、脇坂わきさか 枝里香えりかさんです!!」


 残っているメンバーから考えて、予想通りに枝里香さんの名前が呼ばれる。

 彼女は俺の方をチラリと見ると、足取りも軽やかにステージ中央へ進み出ていった。


「枝里香ちゃ~ん!!!」

「四位、おめでとう~!!!」


 客席からの声援を受け、彼女は満面の笑顔で会場のファンやテレビカメラに向けて手を振って応えている。


「おめでとうございます。枝里香ちゃん!」

「はいっ! ありがとうございます!」

「第三回と同じ、四位となりましたね」

「いや、もう、順位は落ちていくだけだと思ってました」


 初めての人気投票から、ずっと一桁順位の枝里香さんは余裕でMCとの会話をこなしている。

 流石に、第一回から上位に入ってる人は安定感も抜群だ。


「──今後もグラビアは続けていくつもりですので、これからも応援よろしくお願いしますね♪」

「ファンの方々には嬉しい情報ですな」

「ええ。……それでは、ありがとうございました。二期生、ユーピテルこと脇坂 枝里香さんでしたぁ!!」


 グラドル継続宣言で客席を沸かせると彼女の出番は終わり、いよいよトップスリーの発表に移る。

 残っているのは昨年の一位二位である梨奈さんと知実さんの超人気メンバー二人に、新人で新星である俺だ。


 大体の人が予想していた通り、三つ巴での最終決戦である。



 +++



「さあ、いよいよトップスリーの発表です」

「昨年のツートップに期待の大型新人。甲乙つけがたい三人が残りました」

「ファンの皆様方の選択は如何に」

「では、発表と参りましょうか」

「うおぉぉぉ!!!」

「知実ちゃ~ん!!!」

「りなり~ん!!!」

「美久里~~~!!!」


 男性MCの言葉に、客席が湧き立つ。

 全国のテレビを前にしたファンも盛り上がっているだろう。

 だが、ここで女性MCが無慈悲な一言を放った。


「そうですね。……と言いたいところですが、その前にCMですっ!」

「えぇぇぇ!!!」

「うそぉぉぉ!!!」


 今年は全国に向けて、BSでの生放送有り。

 当然、途中でCMが挟まれる。

 聞いたところでは、主にシュス・ソーラメンバーが出ているCMが流れるようだ。

 ff・フォルテシモの営業が頑張った結果もあろう。


 BSに有りがちな長い通販CMが無いだけマシだと、ファンが思ってくれれば良いのだが。



 +++



「──CMは、まぁ、仕方ないですな」

「BSの生放送がありますからね。昨年は気にしなくてよかったのですが」

「これも、シュステーマ・ソーラーレの人気が上がった証でしょう」


 テレビで山場CMが流れている間、MCは場を持たせようと二人で会話を重ねる。


「ええ。来年には地上波での生放送、というのも私は期待しちゃってます」

「それはいいですな。来年のMCも私たちでお願いしますよ。社長」


 男性MCが上手の舞台袖から見ている社長に話し掛けると、会場の其処彼処そこかしこから笑い声が聞こえる。


「それは私からもお願いしたいですね。……さて、もうすぐCM明けですね」

「では、仕事に戻りましょうか」


 進行スタッフから合図があったMCたちが、CM後に向けて表情を変える。

 遂に今回の例大祭における最大の山場を迎えるのだ。

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