第18話
「このアイドルたちが、新たなメンバーとなる八人ですっ!!」
「ではっ! みなさん、盛大な拍手をぉ!!」
「お、おおぉ!!」
「か、可愛い子がいるっ!!!」
「こっち、見てぇぇぇ!!」
ステージに立ち、客席と向かい合うと、声援や歓声が一段とうるさくなる。
その中で俺は、自分でも可愛くて魅力的だと思う微笑みを浮かべて来場者を見渡していた。
「はいっ! それでは一人ずつ、挨拶と話を聞いていくとしましょうか」
「そうですね。……では、まず、先頭で来ましたあなたから」
「は、はいっ!! え~、六期生としてデビューします、大和田 紫苑。十七歳です」
流石は我ら六期生のリーダー格。
最初は動揺していたが、自己紹介をしているうちに少しは落ち着きを取り戻したようだ。
「はい。ありがとうございます。十七歳ということは高校二年生でしょうか?」
「はい。六期生では最年長となります」
「なるほど。では、大和田さんが彼女たちのリーダーみたいなものですね」
年上のMCたちとの会話も、問題なく
まぁ、彼女はシュステーマ・ソーラーレのプロダクションであるff・フォルテシモ付属の養成所出身。
裏方としてシュス・ソーラのミニライブ等を手伝うこともあり、いろいろと慣れているのだろう。
もう一人の付属養成所出身の智映ちゃんは、年齢の関係で裏方の経験が無いとのことなので少し心配だ。
「──大和田 紫苑さんでした。では、次の方」
「はい。まずは自己紹介をどうぞ」
笑顔を浮かべて他のことを考えていると、知らないうちに紫苑さんの挨拶が終わっていた。
「は、はいぃぃ! え、えっと……。い、市原、茉美、十六歳、こ、高校、い、一年生、ですぅ!」
「お、落ち着いて。緊張するのはわかりますから。はい、深呼吸」
「わ、わかり、ました。……すぅ、はぁ……」
六期生のみんなが予想していた通り、茉美さんがテンパる。
その緊張具合を見て、女性MCが助け船を出していた。
「デビューする新人さんですから、緊張して上がるのも当然ですよね。私も女優として最初の仕事は、台詞が一つしかないのに噛んでしまったのを思い出します」
「私も新人アナウンサー時代は声が震えてました。ラジオの生放送でね」
「そ、そうなん、ですか」
巧みな話術で、茉美さんの緊張を
流石は芸能界の先達といったところだろう。
+++
こうして、順番に紹介と挨拶が進んでいき、そのたびに会場が湧く。
紗綾香さん、友菜さん、佐起子さんと続き、いよいよのぞみちゃんの番となった。
「さぁ。次は六人目となります」
「いやぁ、可愛らしい、お嬢さんだ」
「ありがとうございます。七澤 のぞみと申します。年齢は十四で、中学二年生です」
「うおぉぉぉ!!」
「可愛いぃ!!」
にこやかに堂々と、彼女は自己紹介をする。
そこには、例大祭が始まるまで少々不安そうだった美少女はいなかった。
場所と雰囲気に慣れたのか、意外と度胸が強いのか、そんなところか。
「のぞみちゃんは、大丈夫そうですね。それでは、挨拶をどうぞ」
「はい。若輩者で、まだまだ経験が足りませんが、応援していただくと嬉しいので、よろしくお願いいたします」
そう言うと、お淑やかに頭を深く下げる。
お嬢様という仕草を見せつける彼女に、会場に詰め掛けた多くの男性たちが歓声を上げた。
「応援するするぅ!!」
「お嬢さまぁ!!!」
「いや~。凄い声援ですね」
「今後が期待できますね。頑張ってください、七澤 のぞみさん」
「はい。ありがとうございました」
「それでは、次の方にいってみましょう」
いよいよ、先ほどから注目を浴びまくっている超絶美少女の出番が来た。
そう、俺のことである。
+++
「お、おぉ!! これはまた、一段と可愛らしい……」
「……えぇ。……本当に」
「ありがとうございます♪」
俺の魅了する笑顔に、MCの二人が息を飲む。
まぁ、シュス・ソーラの中で匹敵するのは武智 梨奈だけだから仕方がない。
芸能界全てに広げて見ても、十代から二十代前半では二桁はいないぐらいの美貌だ。
「……ん、んっ! そ、それでは、自己紹介をどうぞ」
「はい。萱沼 美久里。中学二年生で十四歳です。よろしくお願いします♪」
「うっ、わぁぁぁ!!!
「ヤ、ヤベえぐらい、かわええ!!!」
「俺、単推しするぅぅぅ!!!」
自己紹介の後、にっこりと笑顔を浮かべて頭を下げると一瞬会場が静かになる。
そして頭を上げるころには、本日最高と思われる歓声が俺に浴びせられた。
「いやぁ、私の個人的な感想ですけど、萱沼さんは武智さんに並ぶほど可愛らしい……」
「そうですねっ! 私も、そう思います」
「それは光栄ですっ! とても、嬉しいですね」
MCにマイクを突き付けられながら、二人と会話を続ける。
もちろん、その間も男性を虜にする笑顔や態度を忘れない。
ただでさえ超絶美少女なのに、それに輪を掛けて客席のファンの心を奪っていく。
「では、挨拶をお願いします」
「わかりました。……んっ。これからも元気に頑張っていきますので、応援よろしくお願いしますね♪」
鏡を見て研究した挨拶を、
元男性の俺から見ても、めっちゃ可愛いと思う身体の使い方に他の男たちはどう思うだろうか?
「も、もちろん、応援するよぉ!!!」
「うおぉぉぉ!!! 美久里ちゃ~ん!!!」
それは、こうなるだろう。
サービスで片手を小さく軽く振ると、ますます会場の熱狂は高まっていく。
「わぁ、凄い歓声ですね」
「それはそうでしょう。シュステーマ・ソーラーレを背負う一人になることを、期待します」
「そうなるよう、頑張りますっ!」
「ふふっ。萱沼 美久里ちゃんでした」
梨奈さんと区別を付けるように、元気キャラの印象を少し付けるように演技する。
同じような超絶美少女が二人より、少しでもタイプが違うほうがアイドルグループにとっても良いのは当然だ。
「ありがとうございました。それでは、最後となりますか」
俺の出番が終わり、六期生最年少の智映ちゃんに注目が移動した。
ちょっと場を熱くし過ぎた自覚があったため、彼女が心配である。
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