高校生活ループるーぷ!!

翡翠 珠

1限目 最終日と初日

君たちは、ブレイブという力を知っているだろうか?


曰く―――――人外のような身体能力。

曰く―――――天才をも超える頭脳。

曰く―――――魔法のような超能力。

曰く―――――水や炎を操る強大な力。


それらのような言い表せない能力を総称してみな、ブレイブと呼ぶ。

そして、その力を使うもののことをブレイバー、そう呼んでいる。

その力に目覚める条件はいまだ不明で、勇気を振り絞って何かをなしたとき、などと聞くときもあれば、朝目が覚めるとブレイバーになっていた。なんて人も居るという。


さて、そんな異常な能力、ブレイブを持つ人間が人間社会で、普通に生活できるのだろうか?

答えは否――――――――ではない。

ブレイバーという人種が一定数いるのならば、ブレイブを悪に使うものがいても何ら不思議ではない、つまり、犯罪者にとってブレイブとは強力な武器のようなものだ。

―――――が、その逆のものがいても不思議ではない。

そう、逆に考えるんだ。

ブレイブを犯罪に使うブレイバーが居れば、ブレイブを世のため人のために使うブレイバーも居るのである。


これはそうして世界の均衡が保たれるようになって早十数年。

世界人口の三割ほどがブレイバーとなったこの世界にある高校の中での出来事だ。


◆◆◆


「ああああ…………。はあ。やっと高校生活が終わる…。

友達はゼロ…、学校行事は参加こそしたものの、ほとんど人と話すことなく終えた。

何が楽しいんだよ……。」


2026年、3月9日、卒業式が終わった。

ここ、藤金高校ふじがねこうこうの屋上への入り口である踊り場で、一人座り込んでいるこの長い黒髪の、パッと見れば女子にしか見えないこのさえない青年、紀ノ川きのかわスイがこの物語の主人公である。

項垂うなだれながらぶつぶつ独り言を言っているスイの耳に、階段を上ってくる足音が聞こえた。


「さーてと、ここならループされてもいけたはず。…………ん?誰だ?」

「えっいやあのそっちこそ……」


慌てて返事をするスイ。

それを見た少女が、綺麗な白い長髪を窓から入る風になびかせながら自己紹介をする。


「あ、私?私は藤金高校三年五組、酒々井しすいシロナだ。と言っても、もう会うことなどないと思うが……あ、そろそろ時間だな。」


シロナと名乗るその少女がそう言った直後、スイが何度も聞いたことのある音が、卒業式の終わって静まり返った校舎に鳴り響く。



キーンコーンカーンコーン――――――――。



チャイムが鳴り終わると、シロナがスイを見つめ、三度みたびほど瞬きを繰り返し、驚いたように言う。


「え?なな、なんでいるんだ!?」

「は…?いやそんなすぐ移動できないだろ……。」

「いやいや……。じゃあ抜け出し成功……?」


そういってスマホを取り出すシロナを不審に思いながらも見つめるスイ。

何を言っているのか理解できないようだ。


「いや…しっかり……。あ、お前も見るか?ほら。」

「へ……?え?なんで?」


シロナに差し出されたスマホの画面には、ごく普通のありふれたホーム画面が映し出されていた。

―――いや、一つ、確かにおかしな点はある。

時刻と日付が、どう考えても先ほどまでとは一致しなかった。さっきの卒業式は確実に2026年の3月9日に行われたものだ。

しかし、シロナのスマホに表示されている日付は2024年4月5日だった。

慌てて自分のスマホを見るが、そこにも2024年4月5日の表示があった。

それを見るとなんだか体感温度が上がった気がするようなスイが、慌ててシロナに尋ねる。


「な、なあ、これ……どういうことだ?」

「どういうこともなにも、そこに書いてあるままだ。は西暦2024年の、4月5日。

さっきの卒業式から3年前、ちょうど私たちが入学した日だ。」

「は…?」

「そうなるだろうな。……あ、丁度いい……スイ、だっけ?お前にも説明してやる。

だから、私に協力してほしい。」

「……?何言ってるか分からないんだけど…てかなんで名前知ってんの………」


スイがそう言った瞬間、校内放送が流れる。


『1年4組、紀ノ川、酒々井、直ちに職員室に来なさい。繰り返す。1の4、紀ノ川、酒々井、直ちに職員室に来なさい。』


と。


「あ……忘れてた。」


シロナが思い出したかのように言う。

それを聞いたスイはなんの事か分からなかった。


「入学式だよ。ループしただろ?」

「え?マジで?ガチのループ?」

「そうだよ……理解力ないな。」

「うるせー。……とりあえず行こうぜ職員室。」


職員室に向かうスイとシロナ。

廊下を歩きながら説明を始める。


「スイ、説明してやるよ。」

「説明?」

「うん。ループについて。」


そうしてシロナは話しながら廊下を歩く。

職員室に呼ばれていることを忘れるかのような遅足で。


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