第3話 校長先生との会話

「………はぁ? 教師??」


 さすがに耳を疑った。

 聞き間違いかと思った。だが、そうでもなさそうだ。

 なぜなら、校長先生は頭だけじゃなく表情まで輝いているからだ。


 この微笑み………純粋で素直な子供のようだ。


「あ、あはは………どうも」

「いやはや、ちょうど今教師の人数が足りていないものでしてねぇ。見ての通り、我が校は世界で数少ない大学校ですから、どうしても生徒が多いんです」

「確かに………バカ広いですよね」


 俺は作り笑いをしてみせる。


 建物はデカく、土地は広い。

 校舎もパッと見ただけでも7階はあったな。


 しかも、校内に入って知ったのだが、ここは山の中だと言う事。

 山の木々を伐採し、土地を綺麗に整え、様々なデカ過ぎる建物を立てる。

 どれほどの時間と労力と建材を使ったのだろうか。


「ち、ちなみになんですが………ここの生徒さんは合計で何人居るんでしょうか?」

「………ふむ、何人だったかね? すまん、ちょっと生徒資料を取っておくれ」


 校長先生の指示で、スーツ姿の男が棚から1つの青い本のような物を取り出す。


「こちらでこざいます」

「ありがとう」


 校長先生はそれを受け取り、髭を弄りながら次々にページをめくる。


 見たことのない本の形だ。

 いや、これは本なのか?

 本にしちゃあ大き過ぎるし、1ページごとの紙が薄くて少ない。

 閉じた状態だと、普通の本ならページで埋まるはずだ。なのに、この本は閉じた状態でも中身がガバッガバ過ぎる。


 これがこの世界の本なのか?


 そんな事を内心でぶつぶつと呟いていると、校長先生が「あぁ、これだこれ」と言いながら、テーブルの上にページを開いたまま本を置き、俺に見せてくる。


「ここに書かれている数字が、今年の生徒の数です」

「えっと………765………765!?」

 

 おいおい、なんだこのバカげた数!?

 俺が幼い頃に通ってた学校でも、多い時で100人だぞ!?

 ここの学校には生徒が765人も居やがんのか………そりゃあこんなバカげたデカさしてる訳だな。


「ちなみに、こっちの数字が今までで一番生徒が多かった時の数字です」

「えっと………1201ぃ!?!?」


 おかしい、おかし過ぎる。

 学校ってこんなに生徒が集まる所だっけか?

 

 いやまぁ、俺が通ってた学校はただ人数が少なかっただけかもしれねぇけど、1000人越えるとかどんだけ教室あんだよ………。


「いやぁ、1000人超えてた時は寮の部屋の数が足りなくて、大変困ってましたなぁ。ホッホッホッ」

「寮? ここには、寮があるんですか?」


 そう言えば、この学校内に入った時に寮らしき建物が2つあったのを覚えている。

 まぁ、その寮もバカデカかったんだが。


「えぇ。何せここは山の中ですから、自宅から通うとなるととても距離があるんです。なので、この学校に通っている生徒。そして、教師の皆さんには専用の寮を用意してあるので、そこで寝泊まりしてもらってます。もちろん、食事も提供しております」


 765人の生徒と教師分の食事ねぇ………とんでもねぇ食費がかかってそうだ………。


「ホッホッホッ、話が逸れてしまいましたな。ギャドルグさんには、Dクラスの担任を務めて貰おうと思っております」

「ほう、Dクラスですか」

「はい、君、ギャドルグさんにDクラスの生徒を名簿を渡してあげなさい」


 校長先生の指示に、スーツ姿の男が今度は白い本を取り出し、俺に手渡してくる。


 俺は手渡された本をめくると、そこには7人の顔写真と名前が書かれてあった。


 だがしかし、この本にはページが1枚しかなかった。

 そのページの裏は真っ白。

 何ーつ文字が書かれていなかったんだ。


「えっ? Dクラスって………7人だけなんですか?」

「ホッホッホッ。えぇ、人数が少ないクラスでしてね」

「は、はぁ………なるほど」


 何かがおかしいような気がするな。

 だってこのバカデカい学校には765人も生徒が居るんだろ?

 なのに、このDクラスって所には7人しか生徒が居ない。しかも全員女子生徒だし。


 たった7人の為の教室があんのか?

 いや、もしかしたら超優秀な生徒なのかもしれない。

 もしそうだとしたら、優秀生徒としてクラス別にされててもおかしくはないの………か?


「ま、まぁ………とりあえず、この7人の生徒が、今後俺が教育していく生徒って事でいいんですよね?」

「えぇ、そうですよ。では、Dクラスの生徒達にギャドルグさんを紹介しなければならないので、Dクラスへ案内しましょう」


 校長先生は椅子から立ち上がる。

 俺も貰った名簿と荷物を持ってフカフカの椅子から立ち上がると、校長先生の背中をついて歩く。


 Dクラスかぁ、一体どんな優れた生徒達なのだろうか。


 あれ? ちょっと待てよ?

 なんか普通に教師して話進んでるんだが??


 俺、教師なんてやった事ねぇぞ!?!?


 俺は内心で焦り散らかす。

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