第十六話 警備隊のお仕事②
「一体なにしてんのさあぁぁぁぁぁ」
アステラさんが叫ぶ。
一通り探してみたのだが真っ暗なゆえになかなか見つからない。
彼女は明らかにさっきまでの余裕は失って本気で焦ってるのがわかる。
「すいません…………」
「アレクサンダーくん。キミはいったいどうしてくれるのかね!」
「再発行ってできるんですか?」
「ノンノン、できないね。一定数のクエストをこなすまでは発行した国でしか再発行できない仕組みなのさ!」
やらかしてしまったなぁ。見つけないとそれこそ不法入国者として捕まってしまう。
「うん! もういっそのことワタシが捕まえちゃおうか!」
「頑張って探しますからそれだけはやめてください!!!」
――――いてっ
足に何か当たる。…………って、あっ!
「ありました!」
「おせーぞアレクサンダー! ん? アレクサンダーでいいよね?」
「あ、はい」
うぅ、探索に一時間ぐらいかかってしまった。大変申し訳ない。
「急いで仕事を終わらせるわ! ウェイクアップ!」
「ウェイクアップは「起きて!」ですよ」
「うっさい!」
アステラさんが僕の手を強引に掴む。手汗がすごいがそこを突っ込んだら次は本気で殺されそうなのでやめておく。
「最短ルート使っても遅刻しそうだわ…………」
強引に手をつかんだままのアステラさんが穴から飛び出て爆速で仕事をこなしてく。
そして、二つ目の曲がり角を右に曲がって狭い道を通っているところで事件は起こった。
――――バンッ
人にぶつかって尻もちを搗く………… なんで人がこんなところに?
「あ、えと………… 大丈夫ですか?」
「大丈夫なわけないだろ! ようやくここまで来たってのに………… ってあ?」
倒れたのを見ると数人単位らしい。彼らは僕を見た後にアステラさんを見る。そしてみるみる顔が青ざめていく。
「おまえ………… なんでアステラが? いつもは一時間前に探索終わって戻ってるって言ったよな?」
「んー? ワタシがどうしたのさ」
「いっいえ! なんでもありません!」
彼らが誰かを後ろに下げたのを僕は見逃さなかった。そして、アステラさんも同様に見逃さなかったらしい。
「そう、誘拐グループか。後ろに隠して逃がそうとしているソイツを差し出せばある程度は見逃してやろう。さぁ、差し出せ」
「ちっ………… 戦闘だ」
相手が狭い路地で一斉に武器を構える。だが、この体制は双方にとって不利だ。
「僕が」
「アレクサンダーは後ろの誰かをなんとかしといて、ワタシが処理するから」
そういうとアステラさんはどこからともなく武器を取り出す。あれはRank4以降の特権だったはず。
『ツライシゴト』
「!?」
敵が一瞬で全員ダウンしてしまった。いったいどんな技を…………
「アレクサンダーこいつを頼んだ。こいつは王族の紋章を飾ってる。追手が来る前に連れて帰るぞ」
◇◇◇
というわけだ。
「城が見えてきた、ペースは下げてもいいが後ろをちゃんと確認してくれ」
「わかりました!」
不思議と追われてる感覚がしない。何事もなければいいのだが。
「ギャン!?」
「アステラさん!」
アステラさんが何かに足をつかまれて屋根から落ちる。
「バカ! 止まんな! 後から追いかけるから捕まるな! ソイツを守り切れ!」
声がフェードアウトしていく。アステラさんを助けに行きたいのだがそんなことをしている場合ではない。
「屋根チェイスなんてめんどうなことをしてくれおって」
「!?」
いきなり後ろに真っ黒な男が現れる。周囲を観察していたはずなのに視認できなかった。
「あのさ~ こっちも仕事なの。生活かけてるわけ。なのにそんなあまっちょろい速度じゃ殺すしかないじゃん。もっと本気出して逃げてくれよ。そしたら失敗した時も殺されないんだからさ」
男は剣を構える。寝ている女の子がいる状態で戦うなんて絶対にできない。ここは逃げ切るしかない。
『
(おおおおおお! 足が軽い!)
重ね掛けを使用すると負荷がやばいと聞く。だが護衛をしている状態じゃこの選択は仕方ない。
「うお、一気に早くするじゃん。バテない?」
「この程度でヘバる僕じゃありません」
「いいねぇ、その調子で走れたら殺さないで上げるよ」
いつのまにか並走していた男が距離を落とす。いったい何を考えているんだ?
ただ好都合だ。城への距離はもう10キロもない。
「やばい! 屋根がもうない!」
ここで問題が発生する。王城の付近には広場があったために屋根がない。
(くっ、広場には人がいっぱいいる…………)
ここで広場に飛び込めば大惨事になりかねない。どうやって切り抜けるべきか。
「減速すんなって。殺さないといけなくなるじゃん。ほら、いいから広場なんて飛び越えろよ。たかが1キロ程度だろ」
さっきの男が追い上げてくる。この男は殺したいのか何がしたいのか。
一か八か飛ぶしかない。
(このままならいけるっ!)
脚力がいつもの三倍以上強化された状態で思いっきり飛び上がる。女の子が落ちないようにしっかりと掴んで。
――――――――――――
――――――――
「いけたっ!」
広場を飛び越えて王城の端に到達するとそこには貴族服を着た人が待っていた。
「シャーレ姫様!!!!!」
貴族っぽい人たちが駆け寄ってくる。
「無事でしたか! あなた様が救出してくださったんですね! お名前は?」
「えっと、アレクサンダーです」
「ありがとうございますアレクサンダー様! ここからは姫様を預かりますので引き渡してください」
引き渡すように言われて引き渡す。すると後ろからさっきの男が出てくる。
「やぁやぁお疲れ様。ナイスなジャンプだったよ。いいもの見せてもらった」
「お前は何が目的だっっっ!!!」
「ん? 目的はもう達成したよ?」
男はカラっと笑う。するとさっきの貴族が対応するかのようにこういった。
「あぁ、お疲れ様だ。よし、このままシャーレ姫を殺してしまおう」
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