第十五話 警備隊のお仕事①

 まったく意味が分からない。なぜ僕は女の子をお姫様抱っこしながらアステラさんと並走してんだ?




「彼女がいるから置いていけないんだよ! ハリーアップ急いで!」


 そういうとアステラさんはジャンプして屋根の上に。置いていけないって言ってるけど思いっきり意味わかんないルート通るじゃないですか!


脚部強化スピード


 ぴょーん。思いっきり跳ねてしまったから女の子がぐらんぐらんしてる。


「ちょ、ちょっと揺れすぎです~」

「ご、ごめんなさい」


 走りながら女の子の気を使うなんてレベル高すぎるって! ガクンガクンと揺れるのにフラフラしちゃったみたいで女の子がぐったりしてしまった。

 僕が女の子に気を使ってる間にアステラさんはぴょんぴょんと屋根を飛んで先を行く。まったく人使いが荒いったらありゃしない。


「このまま城に突っ切るよ! モアスピード!」

「ちょっと待ってください! この女の子が気分悪そうにしてるんで!」

「あー、ソーリー。じゃあこれでどうかな? 『スリープ』」

「えっ、ちょいきなりすぎま…………」


 うわぁ、変な態勢で寝ちゃったよぉ。かわいそうに…………


(というかどうしてこんな状況に?)


 ほんの数時間前に契約を結んでからいきなりこれだ。毎度毎度厄介なことに引っかかる性格なのだろうか?




◇◇◇




「協力関係といったからね! 今回は奢って進ぜよう! ここの料理はとってもヤミーだからね! いっぱい頼んでくれて構わないよ! ということでおじちゃんカモンヌ!」


 そういって彼女はさっきのおじさんを呼び出す。するとおじさんはスルっと現れる。


(アステラさんってなんだろう………… キャラが濃いなぁ。)


「えーっとー、とりあえずワタシは適当で。あんたはどうする?」

「よくわからないので僕も適当で」


 今度はおじさんはスルっと消えていく。どうやってあんな技術を身に着けたのだろうか?


「協力関係っていうけど、とりあえずはワタシの付き添いをやってくれたらいいよ。最近はペトリコールのせいで内乱が起きかけてるからね」

「ペトリコール?」

「あれ? 知らない? レッドヘルを通ったならいっぱい見たと思うんだけどな」

「あぁ、レッドスライムのことかぁ。ペトリコールっていうんですね」

「レッドスライム………… 確かにスライムっぽい見た目をしているわよね。うん、あれはペトリコール。国が手を焼いているモンスターの一人なの」


 どうやらあのペトリコールという生物はテスラの産業に大きくかかわってくるモンスターらしい。アステラさん曰く電磁鋼の採取をしているとペトリコールが現れるせいでその処理に困っているらしい。


「あれはねぇ、国の負の産物なんだよ。だからあれを根絶する動きがあったんだけど見事に失敗しちゃってね、対立が激化してるっぽい。国が経営してるテスラ電磁鋼生産ラインでも暴動が起きてね、そこにフィオの鎖国が加わって地獄みたいな状態なわけ。オーケー?」

「うーん、おーけー」


 そこでいったん会話が途切れる。


「お持ちしました。適当セットです」

「適当ってセットの名前だったの!?」


 おじさんはテキパキとテーブルに料理を並べていく。これ以上話すことはないのかアステラさんは黙々と料理を食べだす。


 うん、おいしい。テスラの食材は見たことないものばかりだが、どこか食べたことあるようなさっぱりとした味がしてとても食べやすい。


 ――――――――――――


 ――――――――


「さぁて、腹いっぱい食したことだろう! サーチタイムだ!」


 アステラさんはそのままおじさんを呼び出しお金を払う。それに倣って僕もついていく。


「といっても警備隊の副隊長はすることが違うんだよね。普通に警備してるだけじゃダメ」

「でしたら何をするんですか?」

「聞くよりも見るが早い! ついてきな!」


 アステラさんが走り出す。それについていった先には………… 謎の丸いドアがあるところだった。


「ここから地下につながってる感じ。副隊長は地下探索も仕事なのさ、さぁレッツゴー!」


 ドアを蹴り飛ばして中に入っていく。ガコンって音が鳴ったけど果たして大丈夫なのだろうか?




◇◇◇




 地下は暗くて暗くて仕方ない。


『『ライト』』


 二人同時に魔法を唱えて探索についていく。


「ここはいったいどこなんですか?」

「地下放電施設。電磁鋼を生産するたびに結構強い雷属性の物質が発生するからこうやって生産施設の下には大規模な放電施設が必要になるってカンジ」

「なるほど」


 よく見ると周囲には謎のマシンが散乱している。フィオ王国の技術じゃ絶対に作り出せないであろうマシンに思わずどういうシステムなのか気になってしまう。


「さ、いくよ。正直ワタシは暗いところはあんまり好きじゃないからね、さっさと終わらせようか」


 見回り自体は45分程度で終わった。だが、ここで僕がやらかしたことに気づく。


「…………すいません」

「ん、ドシタン相棒」

「冒険者カードを落としてしまったかもしれないです」

「ワッツ!? こんな暗いところで何大事なもの落としてるんだよ!」


――――――――――――


 二部構成です。切るタイミング失って若干遅刻しました。申し訳ございません。


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