第十二話 レベルアップ!

「あらまぁそこのわけーの、資金が枯渇してるところによく来てくれたな。歓迎するでぇ?」




 赤い土を迂回して走り出して数時間、無我夢中で走っていたところによくわからない五人集に接敵してしまった。


「あの、街はどれくらい先にありますか?」

「ん? あんたテスラのもんじゃねえんか? テスラはあっちだ」


 そういってガタイのいい冒険者?さんたちが指さしている。

 しかしその目は善意の目ではない、嘲笑の目に見える。だから一応剣に手をかけて警戒しながら先に進もうとする。


「んで? 教えてやったんだがいくらくれるんだいあんちゃん?」

「あの、今は手持ちは…………」

「そんな堂々と嘘つくなんてやめよーぜ。その背中にあるのはどうみても金品だろう?」


 案の定彼らは聖剣を指差してきた。仕方なく僕は剣を構える。


「申し訳ありません。これがなくなったら僕は何もできないので」

「カモがネギ背負ってきたと思ったらついでに鍋に飛び込みにまで来たぞおまぇら」

「「「wwwww」」」

「やっちまえ!」

「はっ!」


 さすがに5人はきつい、どうにか1vs1もしくは1vs2に持ち込めないか確かめる。


「おー、こいつ威力だけはヤバそうだけど剣技が見え見えすぎるっすよ親方ぁ」

「こんなところに迷い込んできた放浪者なんてそんなもんだろうよ。やっちまえ」

「っっっっっ!!!」


 横腹から…………血がっ………… まずい。


 周りは隠れられるような木はない。なぜかずっと道中に大きな木や草はなかったような…………


「おーいあんちゃぁん、降参しちまえよぉ。降参したらみぐるみ全部引っぺがして逃がしてやんよ。まぁ野垂れ死んじまっても責任は持たねぇがなぁ?」


 聖剣は何度振っても避けられる、スライムと違ってどうやっても見切られてしまう。


「なんだコイツ、ランク2よりも弱くねえか?」

「これなら俺一人でもいけるっすよ、行ってみてもいいっすか?」

「おう、こういうやつこそなぶり殺しが楽しいからな。いってこい」


 そういうと四人は距離をとる。そう、いまだ!


『スラッシュ』


 剣を縦の円状に振り込む。お腹の痛みで軌道がブレるが無理やり当てることに成功した。


「ふごっ!?」


 一人で襲い掛かってきたやつは動かなくなってしまった。それを見た四人は逆行する。


「ほう、実力を隠してタイミングを伺ってたってわけか。よしもういいお前ら、殺せ」


 下がってた四人が一斉に切りかかってくる。しかし、次はそうはいかない。


脚部強化スピード』『筋力強化ストレングス


 おぉ、バフをかけたことを差し引いてもさっきよりも軽い。




「くっ…………」


 剣を四本ほど交えたころだろうかさっきまで僕が息切れしている状態だったのだが、ついには相手の下っ端たちが息切れする状態に陥った。


「おまえら、追い出されてこんなところで死ぬなんていやだろ!? もっと全力出せよ! もっと! 熱くなれよ!」


 ボスと呼ばれる人が鼓舞するのだが………… ついに一人が足の傷に耐えられず倒れた。

 戦況は好転する。さすがは聖剣といったところか、軽くて振っても体に負荷がかからない。


「次はこれを試してみようかな?」


狂喜乱舞バーサーク


 おおぉぉ、振り込みに力が入る。これなら派手に暴れられる!

 剣の交えあいにキンッって音が発生するようになる。サンドラの出すこの音にあこがれていたから嬉しくなる。いつかはスキルなしでも到達してみたいと思う領域だ。


「ふざけるな! こんなの罠だ!」

「黙れ! 黙って切りつけ続けろ! こんな放浪者に負けていいわけがないだろ!」


 残り3人が絶え間なく切りつけ続ける。二人減ったことで剣裁きに一体感があってなかなか振り込めない。

 ここでもう一発撃ち込めれば。


『Wスラッシュ!』


 サンドラとの練習での限界点、二回振り切るまでに腕が苦痛で振り切れなかったスキル。


「ぶへっ…………」


(うまくいった!)


 ボスと呼ばれる人と下っ端さんが同時にダウンする。




 この突然に始まった試合は僕の勝利で終わった。


「ランクってあがったらこんなに強くなるんだな」


 シルバーカードにRank1と書かれていた数字がRank2に増えている。

 昨日のレッドスライム討伐であと一体倒したらRank2になると書かれていた。ランクについては熟練度を数値化したもので、ランクが上がるときに一気に実感できると冒険者協会のお姉さんが言っていた。


「それよりもお腹のところがすごい、急がないと」


 さっきの人たちから布を借りて出血部分に巻いたのだが止まってくれない。どうしてこうも不運ばかりなのだろうか。


「もう一回ぐらい耐えてくれよ体力。お願いだからな」


脚部強化スピード


 ――――――――――――


 ――――――――


 ――――


「よかった、ようやく………… ついた」


 二日間ずっと走り続けてようやく赤い土の迂回が終わった。

 テスラ、名前だけはルータスが言っていたことがある。


 独自の技術で発展した国、あたり一面見たことないものに囲まれている。


「わぁ………… サンドラたちに見せてあげたい」


 とりあえず医療センターにいこうとするが僕は大事なことに気づく。


「テスラのお金………… 持ってない!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る