第三話 冒険者といえば
「こちら冒険者協会です~」
実質城から追放されてしまった僕は、町の人から聞いてとりあえず冒険者協会にやってきた。冒険者協会っていうのは名称こそ聞いていたが、王族が立ち入ることなんてないので割と緊張している。
「冒険者登録をお願いします」
協会の外見は昔、本の挿絵で見た居酒屋に窓をつけたようなもので、筋骨隆々なお兄さんから細身の女性まで多種多様な人が色々なことをしている。
「冒険者登録ですね! お名前と年齢を教えてくださいませー」
「アレクサンダー=フィオ、年齢は17です」
ざわっ――――空気が揺れる。一斉に視線が集まってくるのが怖い。
「勇者のお方ですね、任命式があったのでご承知しております。少々お待ちください」
受付嬢さんが僕の前を離れたところに大男が現れる。身長は僕の1.5倍ぐらいだろうか、上半身に服を着ていないし筋肉が強調されている。
「おーこいつが勇者かぁ! なぁに王族ってんだぁ、立派な教育受けてきたんだろう? ステータスとランクはいくつになるんだろうなぁ?」
ガシっと掴まれて身動きが取れない僕を見て大男は嬉しそうにする。
「にしてもこんな美青年が勇者ったぁ神様も面食いだなぁこりゃ。物語の主人公っつったぁこれだよなぁこれ」
大男がガハハと笑う姿は見てて気持ちがいいもので、つられて僕も笑みをこぼす。
「ありがとうございます。見た目が怖かったですけど、いい人ですね」
「おおん、小僧いいやがるなぁ? 見た目が怖くて悪かったがなぁ、怖いやつにそんなこと言うと捻りつぶされちまうでぇ? きぃつけな」
「はい! ありがとうございます!」
「お待たせしました。鑑定水晶をお持ちしましたので触れてください」
大男さんと談笑しているところに受付嬢が戻ってきて、大男さんが去っていく。名前聞いておけばよかったかな。
「これに触ればいいんですよね?」
「はい、手のひらいっぱいに触れてくださって大丈夫ですよ!」
言われたとおりに触れると水晶が金色に輝く。金色って幸福の象徴らしいからおめでたいことなのかな?
「ステータスオールSでランクは…………1です」
「「「「ランク1!?」」」」
周りに笑いとも驚きとも隠せない声が広がる。僕たちの会話に聞き耳を立てていた人がこんなにもいたのかと結構びっくりする。
「勇者がランク1っていったいどういうことだよ」
「デマ情報? 国の使い? そういうやつか?」
いろんな人が一斉に僕のことを話題にしているのに、僕自身がついていけてない。それがどうしようもなく、もどかしかった。
「ランクってどういうものなんでしょうか?」
「冒険者適性のようなものです。ステータスは生まれつきで、ランクは実力と努力であがります。オールSは確かにすごいんですが、ランク2つ離れてしまうとそちらのほうが戦闘能力が高くなってしまいますね」
「ってことだぜ兄ちゃん。おふざけも大概にして王族で威張ってな」
僕が無知なことを察してより大きく罵ってくる人が出てくる。特に同年代ぐらいの人が僕のことを笑ってくる。まぁルータスに罵られ続けたから慣れている。でも、いい気はしない。そんな空気が充満していたところにさっきの大男が出てきて
「ええ加減にせぇよ、おどれら。いきなり勇者に選ばれただけの美青年になにを期待しとるんや? こいつはなぁ、お前らと違って急に戦いに繰り出されたんや。しゃーないやろが。……ん? というか小僧……オールSってすげぇな、おい。その才能はなぁ、今は感じられへんかもしれへんけど、いつかきっと役に立つでぇ。ふぅ。ほな、これで終わりや。受付嬢ちゃんあとはよろしく頼むで」
空気を一蹴した。そしてそのまま大男が帰っていく。叩く空気でもなくなってしまった周りの冒険者たちは再び雑談をはじめ、何事もなかったように進んでいく。
「あ、あの人すごいですね」
「トーマさんのこと? あの人はとってもいい人よ。ちょっとグイグイ来るけど他人を傷つけないからあまり話しかけたくはないけど好きって人が多いわね」
「そうなんですね、僕はあの人好きかもです」
あの大男さんはトーマというらしい。この先きっと会えるといいなと僕は心の中で願った。
「ということでオールS、そして勇者補正を込みでカードのランクは中位帯のシルバーになります。クエストを受注したり冒険者割引を使用する際はこのカードを利用してくださいね」
「ありがとうございます」
カードはもらったとはいえ、まだ不安要素が多い。とりあえず必要な説明をいくつかしてもらい、本題も聞いてみる。
「パーティーを組むことってできますかね?」
「はいできますよ。それについてですけど、正式なパーティー加入とパーティー同士の交流を深めるための一時的な合同パーティーがございます。パーティーの正式加入が決定した場合は基本アイテムを等分しないといけません。ですが仮加入だとそういった条件がなくなります。なので仮加入をさせてくるだけの詐欺も存在するので注意してくださいね。」
「ありがとうございます」
聞きたいことは聞けた。なので先ほど入ってきた人のところに僕は向かう。
「サンドラさん。僕をパーティーに入れてくださいませんか?」
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