第35話 真実

翌日、弟子とルアを私の執務室に呼び出した。


「なぜ今日呼び出したか分かるか?オルラ」


「いいえ!」


きっぱりと答えた。そこは嘘でも「はい」と言う場面ではないか?いや、それは常識にとらわれているだけか。


ルアは髪が濡れている。さっき起きたばかり。そして、私が自分に何を言うのか分かっているようで、オロオロと挙動不審だった。


「まあ、まずはルアだな。ジャレッドを調べろと言ったのだが、法律違反に気付かなかったのか?」


「そ、それはジャレッドの隠蔽が上手かっただけでぇ……それに、大魔法師だって影を使ってたじゃないですかぁ!」


「私は影に『アムアの魔法使い全員の健康、研究、純度について調べろ』と命じた。影がそれ以上調べることはない。」


「……」


頬杖を突きながらニコリと笑い、ルアをおちょくった。ルアは下を見ながら段々と小さくなっていった。


「ということで、今回の事件、処理よろしく!」


「いつものことじゃないですかぁ!!」


私から書類数枚を受け取り、げんなりしながら、小股で歩いて執務室を出ていった。


本物のナマケモノをみたかのようだった。


気を取り直し、コホンッ!と咳払いをした。


「今日は弟子に真実を打ち明けるために呼んだ。」


「?」


ルアがドアの向こうでこっそりと聞き耳を立てている。


「5か月前を覚えているか?王女がどこに住んで魔法を勉強するか言い争っていた時。」


「はい!もちろんです!師匠が良い未来を予知してくださった……」


「今日呼んだのは正にそれだ。その、予知の真相。」


弟子に、あの未来の真実を教えた。10年後に王国が2つに分裂すること、第1王子の統治する西フェートンが、100年も経たずに滅亡すること。


そして、第3王子と弟子が登場しなかったこと。


弟子とルアは口を両手で塞ぎ、青ざめた。


「そんなはずは、マックスお兄様はお父様の政務をお手伝いしているのですよ!?コーディお兄様は剣術ばかりで……」


「分からないと思うが、第1王子は社会主義、第2王子は封建主義って感じだ。」


「……??」


弟子は首を傾げた。そりゃ分からないよな。第1王子と第2王子は、悪女で有名だった太王太后に似たんだろうな。


「まあ、話はこれで終わりだ。後は自由にしてろ。」


「はい!」


元気よく返事をすると、小さな足をバタバタ動かして部屋を出ていった。


空は曇り始めた。ニコリと不敵な笑みを浮かべ、真っ白な空を眺める。


「きっとまた好かれないぞ。弟子。なにせドリューは、お前の父親と偽親友だったんだからな。」

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