第31話 血
アムアの人間なら1度は思ったことがあるであろう、魔法で魔法の毒を消すという意味不明な話。だけど私達には知る由もない。
「あっ、魔法使っちゃった。」
「そういえば……じゃあもう2人でたくさん食べよ!」
「そうだね。」
食料庫は前からこういう事態が予想されていたのか、食器も充実している。洗えば使えそうなレベルだった。
実際は簡単に移せるから食料庫に置いているだけである。普通に洗ってあるので再度洗う必要もない。
「本物のチーズケーキの味がして美味しい!」
「こういうの、初めて食べたかも。」
頬が落ちそうなほど甘く、口の中でとろける。チーズケーキの味がした綿飴を食べているみたい。
危険な状態で食べる美味しい食べ物は、皮肉だけどいつもより美味しく感じた。
食べ終わり、窓の外を見ると、シスルは居なくなり、お姉ちゃんの家に行っていた。
「あれ、アイツお姉ちゃん家に行っちゃった。大丈夫かな……。」
「えっ!?」
「まあでもここは安全だし、お姉ちゃんを信じてゆっくりしていれば……」
気が付くとオリーはドアを開けっ放しにしてどこかへ行ってしまっていた。大魔法師様鍵かけてなかったんだ。
暇だから1人で本を読み始めた。
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ジャレッドさんの家まで息切れしながら、全力で走った。この前フランに教えてもらったから場所は大体分かる。
あたしが行って助けになれるかは分からないけど、ジャレッドさんの家に行って魔法石を貰いに行こう!
前にフランが言ってたことが事実なら、ちゃんとあるはず!
『ピンチの時はジャレッド家の物置部屋に行くといいよ。アムアでは使うことだけ禁止されてる魔法石がジャレッド家には研究用としてあるから。』
でも、使えたとしても初級魔法の下6つくらい。それが使えるかどうかで言ったら、確実に使えない。
「ジャレッドさん!お邪魔します!」
ジャレッドさんの家に着き、無断で入った。王族としてはあるまじき行為だけど、一刻を争う事態なのだから仕方ない。
オルラは段々と大魔法師に似てきたのであった。
「……弟子?なぜここに、いや、リリアはどうした?」
「リリーを気遣ってあたし1人で来たんです!アムアを助けたいから!」
「なぜだ?弟子と同じ血など一滴も入っていないんだぞ?」
「でも今はここが、あたしが住んでる国なんですから!家族であろうと、血が繋がっていなくても、関係ありません!」
師匠は私を不思議そうにじぃっと見つめてきた。なんか変なこと言ったっけ?
「……そうか。」
「ジャレッドさんの研究用の魔法石、借りていきますね!罰は後でにしてください!」
物置部屋のダンボールを漁り、魔法石を1つ取り出した。赤く輝いていて、あたしのドレスに付いていたダイヤモンドみたい。
そのまま走ってコーデリアの家に向かった。
「……という感じです!」
「なるほどね。」
「……」
その話を、こっそりと大魔法師が聞いていた。
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