第30話 石熱病
「皆の魔力は解放出来そうか?」
「……もうすぐでオルラが解放します。」
日が落ちてきて夕方になり、大魔法師様と仲直りした後、大魔法師様は他人の心配をした。
大魔法師様は本来、優しい人だった。その人が生きるために、残酷なことを厭わなかっただけだって、今更気が付いた。
「オルラは才能が無かったわけではありません。解読魔法を使えるようになってまだ間もないのに、もう初級魔法を5つ習得したんですから。」
そう言うと、アムア全体が昼間のように明るくなった。1箇所からとてつもないほどの光が放たれ、魔法使いの体は一気に重たくなった。
魔法使い全員が一瞬で太ったとかではなく、魔力が解放されたような重みだった。
そして、魔力の波長を感じる限り、魔法を使ったのは間違いなくオルラ。この規模を才能がない凡人に出せるはずがない。
オルラは、どんなに優れた魔法使いでも、才能に気が付きにくい体質だった。大魔法師様ですら気が付かなかったのだから、この体質はルア以上だと言える。
オルラは翻訳魔法でシスルを慰め、物撤去魔法でコーデリアの家に積もったラベンダーを片付け、撤去魔法で封印を解き、無害化魔法で有害な魔力を取り除いた。
魔力で魔力を取り除くというのも、おかしな話だが。
「本当だな。……それにしても今日だけで3人も法律違反したのか。元々法律違反している奴も1人いたし。」
魔法石を使っていたジャレッド。それを黙認していたフランクリン。仲間を助けるために魔法石を使ったオルラ。反乱を起こし、国を混乱させた俺。
大魔法師様はしばらく大変そうだな。
1人で食料庫にいたリリアは、コーデリアが連れて帰った。
4人は大魔法師から軽い注意と罰を受けた。シスルには数日の謹慎と人生を楽しめという大魔法師の注意。
ジャレッドとフランとオルラには軽い注意と治癒を受けた3人は(なんで?)と思っていたのだとか。
「あの、なぜ治癒魔法を?」
「魔法石を使ったからだ。魔法石は石熱病という死ぬ可能性がある病を引き起こす。」
経験者のような口振りだった。しかも、フランクリンとジャレッドですら、石熱病という病を聞いたことがない。
外はすっかり暗くなり、星が輝いている。今日は二日月で、月が少ししか出ていなかった。
「今日はもう遅い。今日は客室に泊まれ。弟子、案内を頼んだ。」
「はーい!」
軽い返事をしたオルラはフランとジャレッドを連れ、2人の手を片手ずつ繋ぎながら部屋を出た。
「そういえば、オルラちゃんはなんでコーデリアの家に来たの?食料庫にリリアと一緒に避難しているって聞いたんだけど。」
「ああ、それはですね!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます