第27話 ラベンダー

「フラン!!コーデリア!!」


「「……???」」


3人の足が紫の花で靴が埋もれかけているとき、男の後ろから金髪でオレンジ色の瞳をした子供が走って来るのが見えた。


3人は走ってくる子が誰か分かり、きょとんとした表情で子供を見つめていた。


「……!!?シスルさん!?あれ!?リリーの言ってた奴っていうのは……それにこの大量の花はなんですか?」


「リリアが言ってたのも、今回の騒動も犯人は俺だ。」


何かを聞きたいのはオルラではなくて、こっちの3人だと言うことにオルラは気が付いていない。


オルラは紫色の花を手に取り、見つめた。不思議なことに、シスルはオルラと、フランとコーデリアを襲わなかった。


紫色の花をよく見つめ、オルラは何かを考えているようだった。


ぱっと何かを思い付いたかのように前を向き、シスルに抱き着いた。


「「……!!?」」


「……シスルさん。蟷ク縺帷オカ蟇セ譚・繧九°繧牙燕蜷代>縺ヲ縺上□縺輔>」


不思議と魔法が使え、でシスルの祖国、テオール王国の言葉をオルラは耳元で囁いた。


その言葉を聞き、言葉の意味を理解し、はっとしたシスルは右手で顔を隠し、笑った。


「この花、ラベンダーですよね。王宮にラベンダーの庭園があったのを思い出して……」


「ああ。」


大魔法師とジャレッドがここに向かっているのが見えた。


オルラはシスルに抱き着いたまま、どこかに向かってウインクをし、親指を立てた。


大魔法師は呆れたように微笑み、ジャレッドは無表情だった。


「……シスル、少しこっちへ。皆はもう帰れ。コーデリア、弟子、リリアを頼んだ。」


「はい!」



大魔法師はシスルを連れ、誰もいない海岸に行った。


さっきまでの強風、雨、赤い空は嘘のように消え、太陽がアムアを明るく照らした。


「なぜこんなことをした?」


「……楽しかった記憶までも消したあなたが憎かったんです。」


「それは、申し訳ない。ただ、私は皆に辛い記憶を思い出して欲しくなかっただけなんだが……。」


半分嘘で、半分本当のような口調だった。本当にそう思っていたらしい。


「……虫唾が走る。どうせあなたは良い思い出しかないのでしょうね。大魔法師になって人の記憶で遊ぶくらいなんだから。」


大魔法師は何も言わずに、シスルを抱きしめた。シスルは本日2度目の異性からのハグ。


「ごめん。確かに私は、そなたらと比べると良い暮らしをしていたかもしれない。だが、私は辛い昔を見るではなく、今と未来を見てほしかった。」


シスルが何かを思い出し、大魔法師の肩に頭を置いて涙を流した。


『じゃあ、私は過去を見ないでシスル様と一緒にいられる未来を見ることにしますね!!』


-------❁ ❁ ❁-------

文字化けはシスルの過去回(29話)で明かされます。

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