第26話 ソードマスター
「会うのは10年振りか?フランクリン、コーデリア。」
「……」
コーデリアの家のドアを蹴破り、土足のまま中に入り、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
フランが鞘に剣を収めているコーデリアを後ろに隠し、男を睨み付けた。
「記憶はなくても王国の作法は弁えているみたいだな。今はコーデリアの方がお前よりも強いってのに。」
「……」
フランは黙り込み、ポケットの中からツルツルで光り輝く宝石を取り出した。
コーデリアと男はフランが持っている宝石を知らず、まじまじと宝石を見つめた。
バキッ!!
拳で持っていた宝石を握り潰し、破片を床に落とした。宝石を割った瞬間、コーデリアと男は宝石の正体に気が付き目を見開いた。
「なぜ、お前が持っている?お前がなぜ、違法のそれを?」
「大分前にジャレッドの研究所から盗んだやつ。知ってるでしょ?魔法石の効果。」
石の中にある魔力を人間が吸い取り、一時的に魔力を増幅させられる。人体に悪影響を及ぼす。
男は歯を食いしばり、羽織っていたローブを強く握り締めた。
「……あーあ。1人ずつ消す予定だったが、気が変わった。まあ、お手並み拝見ってとこかな。」
男が手のひらから魔法で炎を出し、家の壁に放った。
「……!!」
みるみるうちに壁から屋根へ、壁から床へと燃え広がり、焦げ臭い。
フランが力を振り絞って炎よりもずっと習得難易度の高い水をかけてみたが、魔力の差からか、かけてもかけても消える気配がない。
そもそも、フランが持つ本来の力を使っても、この男には勝てない。
(剣は魔法に絶対勝てないし……炎を消すにはコイツの力を超えなければならない。)
今のフランとコーデリアを合わせてみても、この男に勝てない。この場にジャレッドさえいたら話は別だけど。
「俺は27年間魔力封印魔法を研究してきた。サボり魔のお前と、剣士のお前が勝てるわけがないんだよ。」
「……じゃあ、炎は極めてないだね。フラン、力借りるよ。」
今までフランの後ろに隠れ、何も言葉を発していなかったコーデリアがいきなり、喋った。
鞘から剣を抜き、フランから魔法石の力を吸い取って剣に押し込んだ。
コーデリアは今、実質的なソードマスター状態にある。剣を一振りするだけで魔力というオーラが炎を消し去る。
男とフランが言っていた『勝てない』基準は、ソードマスターに満たない実力の一般人をさしていただけ。
「……クックク……おもしれぇ。俺の炎が、こんなにも容易く消火されるなんて。じゃあ、これはどうかな?」
男が天井を指さすと、いきなり紫色の花が大量に降ってきた。野生で生えていそうな花だった。
「フラン!!コーデリア!!」
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