第25話 嫉妬

「大魔法師の邸宅から魔力を察知。波長的にリリアか。もう一人居るが……王女だな。見ない間に変わった。」


さっきから天空から大魔法師を探しているが、全く見つからない。痕跡も見つからないし、俺の魔力も無反応。


まあ良い。のんびり待てば姿を表す。今厄介なのは……コーデリアだな。感覚が鋭く、剣を扱える。


いつでも剣の可能性を信じてやがる。剣は、魔法に勝てないことを教えてやらねば。


「……また魔法を使ったな。リリア。それで俺を騙せるとでも?」


巨大な魔法陣がアムア全体を覆った。空は反射で赤く染まり、雲が太陽を遮り、強風が吹き荒れた。


20歳にして下級魔法しか使えないカスの分際……20歳?アイツ、俺より先に拾ってもらったのか?


いや、リリアだけじゃない。大魔法師とルアは知らんが、フランクリンとジャレッドも、フランクリンのペットのモノクロも、コーデリアでさえ……!!


俺は20歳で漸く……それもゴミみたいな魔法使いだったのに……!!


リリアを拾ったのは……コーデリアじゃない。コーデリアは30歳も歳が離れている妹の存在を知らなかった。波長も全く違った。


ルアは知らんがモノクロとリリア以外を拾ったのは大魔法師だ……あの老いぼれ……!!殺す。あの老いぼれだけは絶対に……!!


身分の違いから母が送った刺客によって殺された俺の初恋だった貧民出身の少女。今でも毎日夢に出てくるほどだった。


俺が高位貴族の生まれでさえなければ、多少貧しくても幸せに暮らせただろうに。


もちろん、悲しかった、悔しかった記憶もあるけど、楽しかった記憶だって沢山あった。なのに、無理やり捨てさせた大魔法師が憎くてたまらない。


無表情のまま、瞳から垂れた涙が顔を伝って地面に流れ落ちる。同時に、空から大粒の雨が降り注いできた。


……反逆が失敗したとしても、大魔法師だけは殺してやる。封印されて魔法を使えないはずだ。解除法もない。


俺が殺せなかったとしても、他の奴らが反乱を起こして大魔法師を殺してくれる。


「コーデリア、大魔法師、ルア、フランクリン、モノクロ、ジャレッド、リリア、王女の順だ。」


自分の魔力を出来る範囲で肌から放出し、数々の気配を感じ取った。


コーデリアの家に2人と1匹、ジャレッドの研究室に3人……いや4人か?それと各々の家に1人ずつ。……ああ、ドリューの家にいつもの3人か。


「とりあえず、コーデリア宅に行くとするかな。王女が居て本当に良かった。」


27年かけた俺の反逆計画は、どうなるのだろうな。

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