第24話 オルラの初めて

「オルラちゃん、なるべく大きな音を出さないでね。空で奴が見てる。」


「奴って誰ですか?」


「誰かは分からないけど、反乱の犯人ということは確か。浮遊魔法は上級魔法に属するけど、普通あんなに長く飛べない。」


つまり、犯人は少なくとも最上級魔法は使える魔法使い。最上級魔法が使える人数は分からないけどあまりいないはず。


ていうか、なんで大魔法師様はお姉ちゃんをここに隠さなかったの?お姉ちゃんも中級魔法しか使えないのに!


「それと、オルラちゃんってフランと仲良いじゃん?」


「はい!」


「それなら、私がオルラちゃんの初めて、貰ってもいい?」


人差し指で唇を隠し、ニコリと微笑んだ。折角なら、仲良いフランよりも親密になりたいよね。


オルラちゃんは首を傾げた。同年代の子がアムアに居ないことを初めて悔やんだかもしれない。


「初めてって、どんなのですか?」


「お互い愛称で呼んだり、タメ口で話したりしない?」


「タメ口はリリアさんが良いなら……でも愛称だとフランが……」


「……お互いは初めてでしょ?そうだなぁ。私がリリーで、オルラちゃんがオリーとかどう?」


「オリー!あたし、すっごく嬉しいで……嬉しい!ありがとう、リリー!!」


犯人とかいう人に気付かれないように小さく喜んだ。私自身も友達とタメ口なんて初めてだし、喜んでるオリーもかわいい。


そんなことをしている状況じゃないことはよく分かってる。ジャレッドやフランの無事を祈らなければって、心では思ってる。けど……


初めて友達を作れた気がしてなんだか嬉しい。お姉ちゃんと違い平民出身だし、伯爵家の庶子でもないただの孤児だったから。


「フランがこの話を聞いたらハンカチを噛んで嫉妬するんじゃない?」


「……?」


ジャレッドが見たらどんな反応するんだろ。あの2人仲悪いけど仲良いし。


才能の差がなければ、もっと仲良かったんだろな。ジャレッドがフランに嫉妬することもないだろうし。


今気が付いたけど、食料庫も大魔法師様って感じね。大好物のはじかみが大量にあるし。


「オリー、好きな食べ物とかある?」


「チーズケーキ!」


はじかみ1袋を手に取り、魔力を注いだ。すると、ピンクと白のはじかみが段々とクリーム色に変わり、チーズケーキに変わった。


一目オリーの方を見ると、瞳を輝かせ、ヨダレを垂らしながら見ていた。獲物を狙うライオンみたいなポーズをしていて、冷や汗が出てくる。


「……ま、まだ完成してなくてね。」


「……?」


人の魔力という有害物質が口の中に入ったら大変なことになる。フランとかは別だけど私は無害化魔法を使わなくちゃ!


……あっ。魔法使っちゃった。

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