第22話 異変
「遅いな。こんなに遊んでくるとは思わなかった。」
「大魔法師もオルラちゃんの魅力に気付きましたぁ?」
「なわけ。私は弟子が上級魔法をひとつでも使えるようになったらすぐ王国に帰す。そうしたら、助けられるだろうからな。」
オルラちゃんは多分今頃フランと遊んでいるかな。羨ましい。僕も大魔法師から押し付けられた仕事がなければオルラちゃんと遊べるのに。
「オルラちゃんが小さかったら、リアみたいに可愛いかったのかなぁ。」
「過去の話はやめろ。ルア・アムア。」
「はいぃ。」
大魔法師は過去を聞くのが死ぬほど嫌い。記憶と苗字を捨てる法律を作ったほど。
この法律を作った表向きの理由は平等のためだと主張してるけど、本当は大魔法師がアムアの魔法使いの過去を聞きたくないからだったりする。
魔法使いの過去はほとんどが暗い。死だとか、家庭環境とか。母国を捨ててまでアムアに来ているんだから。
「そういえばジャレッドが最上級魔法を全て使えるようになったんですよねぇ?なにか宴とかしないんですかぁ?」
「ジャレッドは贅沢に興味なんか無い。ルア、お前が私の代わりに褒めてやれ。目指せ次期大魔法師ってな。」
「はいぃ。」
確かにジャレッドなら興味無さそう。貴族出身のフランとコーデリアさえ興味がないし。
「最近リリアはどうだ?」
「元気らしいですよぉ。オルラちゃんとは一度も会ったことないらしいですぅ。」
「……足か。私にもっと実力があれば、あのいやらしい服装も弟子に披露できただろうな。」
リリアの足はコーデリアの不治の病を治した大魔法師の治癒魔法でも治らなかった。
その所為で大魔法師はコーデリアにも恨まれてる。大魔法師も一応人間だから不可能はあるのに。
「……見事な隠蔽だな。」
「ですねぇ。これほど極められた隠蔽魔法は僕でも難しいですよぉ。」
僕と大魔法師は同時に異変を感じた。きっと、リリアとオルラちゃん以外は、異変に気付くだろう。それくらい強くて静かな魔力。
この魔力は最低でも最上級魔法を使えていないとおかしい。だから、現時点で最上級魔法を使える魔法使い、僕と大魔法師を含めて39人の中に犯人は居る。
「反乱か。アムアの歴史上反乱は初めてじゃないか?」
「はいぃ。昔は皆魔法以外に興味なんて無かったですものねぇ。」
「……無駄口叩いてないで弟子とリリアを安全なとこに匿え。弟子が死んだら王国がなにを要求してくるか分からない。」
大魔法師は自分の過去を知らない。だから、どんな弱みを握られているのか、自分でも分からない。当然、僕も知らない。王族のみ知っているはず。
もしかしたらオルラちゃんは知っているかもしれない。
「じゃあぁ、行ってきますぅ。」
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