第21話 魔力欠乏症

「遊ぶって、何して遊ぶのですか?」


「こんなに広いんだし、結構暑くなって来たでしょ?」


フランはいきなりキョロキョロと周りを見渡した。なにか不安そうな表情をしていて、魔力が沢山体から出されているのが分かる。


どうしたんだろう。飴を舐めたから外は見えないけど。なんの気配もないし。


「フラン?どうしたんですか?」


「……ううん。なんでもない。暑くなって来たし、スケートでもしようか。」


「スケート!!やってみたいです!!」


「でも、翻訳魔法をやってるフリとかはしないでね。」


張り切って喉に手を当て、魔力を指先から喉に注いだ。喉はほんのり光ってるけれど、全く別の言語で話せない。


もっと多くの魔力を注いでみたけれど、全く話せなかった。


「魔力を使いすぎると魔力欠乏症になるから気を付けてね。」


「それになるとどんな症状があるのですか?」


「数年昏睡状態になったり、最悪死ぬとかかな。運良く生きたとしても、後遺症で魔力が生成出来なくなってアムアの居住が許されなくなるよ!」


絶対に笑顔で言うことじゃない……。魔法使いはいつもそんな恐怖の中生きてるんだ。コーデリアも、フランも……。


師匠は……恐怖なんてないのかな。だって、無限の魔力を持ってるようなものだもん。


「難しいですね……。」


「じゃあ、スケートやろっか。少し待っててね。」


フランの魔力が手のひらに集まった。オアシスのような色できれい。少し瞬きをすると、一瞬で地面は分厚い氷になっていて、丁度いい気温になった。


いつかあたしもこんな風に魔法が使えると思うとわくわくする。才能がないって言われてるのに、あたしがあたし自身に期待してしまう。


「中級魔法は自然に関する魔法でね。水や炎、草とかを少量の魔力で操ることができるよ。」


「すごい!!中級魔法はどれくらいで使えるようになったのですか?」


「おれはアムアに来てから数えて2年弱かな。でも魔法習得には個人差があるから参考程度に聞いておけばいいよ。」


「たった2年弱で……。」


まだフランの記録しか知らないから早いかどうかは分からないけど。


でも、あたしは5ヶ月でようやく初級魔法の1個目を使えるようになったし、そう考えるとフランは早い方なのかな。


スケート靴を履き、壁を触りながらゆっくりと滑った。


フランはこういうのが苦手なのか、椅子に座ってあたしをただ見ているだけだった。


すっごくつまらないけど、すっごく楽しい。


「やっぱり……。おれを前にしてここまで隠蔽出来るなんて、相当な実力者に違いない……。」


あたしからは遠くてよく分からないけど、フランはなにか呟いてる。あんなに真面目なフランは見たことなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る