第20話 固有魔法

「この後は特に予定がないし、稽古でも付けてあげよっか?」


「いいんですか!?是非!!」


フランとの帰り道にそんな提案をされた。


師匠の教え方は決して分かりやすい、上手というわけではなかった。なんなら、少し分かりにくい。


フランの家の庭へ行った。庭は魔法で怪我をしそうなほど狭かった。


「これ食べて。」


フランから包み紙を渡され、中に入った飴を舐めた。イチゴ味で甘くて美味しい。


舐め終わり、気が付くと庭がこれでもかと言うほど大きくなっていた。


「凄いでしょ!これは昔におれが作った魔道具だよ。体に害はないから安心してね!」


「魔道具……どうやって作るのですか?」


「これはおれの固有魔法でしか作れないよ。大魔法師様は皆の固有魔法を完コピできるから、この飴を作れるのはおれと大魔法師様だけだね。」


固有魔法はその人の特徴を100%表すことができるらしい。中級魔法を使いこなせるようになると、無意識に固有魔法を習得できる。


人の固有魔法を他人がコピーするのは宝くじで一等が10連続で出ることくらい難しいらしい。ほぼ不可能なことを次々と可能にしていく師匠って本当に人間なのかな……。


「翻訳魔法か。外でやる必要なかったな。」


「……ですね。」


「まあいいや。翻訳魔法は簡単で、喉に手を当てて、魔力を注げば出来るよ。」


フランは自分の喉に手を当て、魔力を注いだ。喉は魔力でほんのりと光っていた。前にも見たことある!


すると、フランはよく分からない言語で話し始めた。口の動きは間違いなくアムア語なのに。


「これで出来るよ。効き目は魔力を注ぐ量によって違う。今日はかなり少ないから時間も短かったんだ。」


「すごぉい!!!」


魔力を自由自在に操ることが出来るフランが羨ましい。生まれた時から優れた才能を持ち、多分だけど家族にも愛され、毎日楽しかったのかな。


あたしが家族と一緒に居るときは世界で1番楽しい時間だったもん。


「声帯に魔力を巻き付けるような感覚でやるとできるよ。」


「せいたい……?まきつける……?」


声帯になにかを巻き付けたことなんてないからどんな風にやればそんな感覚で出来るのか分からない。


師匠の教え方よりはマシだけどフランも結構教えるの下手なのかな。


「解読魔法は魔力を注いだら出来る。」


師匠はこんな感じだったし。魔力を注ぐ方法すら教えてくれなかったからルアさんに詳しく教えてもらいながらやってた。


自分の感覚が異次元だということに師匠は気付いていなかったみたい。


「翻訳魔法が難しかったら、運動の代わりにおれの魔法で遊ぼっか。」

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