番外編 他人愛
ジャレッドさんとフランが帰ってきて2日が経った頃、あたしは個人的に気になることを師匠に聞いた。
「師匠!師匠はいつも机とにらめっこしてますけどそんなにお仕事が忙しいんですか?」
「いや、全く。外交交渉の書類のみだ。だから一日多くても4枚だけだな。」
師匠は平然とした表情で言った。しかも、ほとんどがアムアの力を借りたいだけの弱小国で、断るだけだから10分もあれば終わるみたい。
でも師匠がフェートン王国の提案を断ったことなんてあったっけ?時々お父様のお仕事を見ていたけど、了承しか見たことない。
「じゃあ、どうしていつも忙しそうなのですか?」
「……毎日魔法で私の影に調べさせているアムアの魔法使い約647人の健康状態と研究具合と純度の高さをまとめた書類3235枚があるからだな。」
「「!!?」」
あたしだけじゃなくてルアも驚きを隠せていなかった。ていうか約は要らないんじゃ……。正確に把握してるし。
もう色々あって混乱してくる……。魔力の純度が……なんだったっけ?
「それ……覚えきれるのですか?」
「知属性魔法にも限界があるからな。情報に詳しいルアの手も借りながら難なく。」
やっぱり師匠は人間じゃないのかも。才能の差がこれほどまでとは思わなかった。
でもそれだけアムアと、アムアの魔法使いを大切にしてるってことだから、なんだか羨ましい。
こんなにも直向きなのは生い立ちに関係してるのかな。出身とか、知りたい。
「師匠は子供の頃どんな風に生活していたのですか?」
「……大魔法師になる以前の記憶すらない奴が分かるわけないだろ。」
師匠はアムアの中でも珍しく、未だに記憶を取り戻せていないらしい。取り戻す必要を感じないとかなんとか……。
記憶はあった方が絶対楽しいのに。勿論嫌な記憶もあるだろうけど、経験にもなるし。
「ルアは……。」
「僕はルエル王国の貴族令息です。若い頃には結婚して子供も居たんですよ。」
「いつもの喋り方は腹立つがマトモな喋り方だと気色悪いな。」
「じゃあどうしたらいいんですか!!」
師匠は鼻で笑ってルアが師匠をポカポカ叩こうとしても、防御魔法で簡単に防いでる。
ルアは本当に最上級魔法を使えるとは思えない。人を見た目で判断しちゃいけないのは、正にこのこと。
パァァァ
手を置いていた紙から黄金の光が溢れ出した。
アムア語で書かれていたはずの紙は、いつの間にかフェートン語に変わっていた。
「やっと1つ目か。解読魔法習得おめでとう。」
「解読魔法……!!ありがとうございます!師匠、ルア!」
「コーデリアの家に行って自慢してきたらどうだ?」
「はーい!自慢してきます!!!」
-------❁ ❁ ❁-------
大魔法師の正式な書類が少ないだけで、補佐官の正式な書類が少ないとは限りませんよ。
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