第16話 キノコ
「フラン、あれは言い過ぎなんじゃないか?どれほど侯爵家を嫌悪していても、あれは……」
「ジャレッド。人間なんだから、好き嫌いの1つや2つくらいあるじゃん。おれ、愛情を注がれるだけでなにもさせてくれないあの家にはもう二度と戻りたくない。」
俺の知ってるフランじゃない。フランはこんなあからさまに人を嫌ったりする性格ではない。
こっそり忌み嫌ったり、始末したり、そういうことをするはず。元家族だからか?
それにしても……もう6月なのに寒くないか?雪は降ってないけど息吐いたら白くなるし
上着もう一枚着てくれば良かったな。こんな道でフランを待たせる訳には行かないし。
「ジャレッド寒いの?」
「少しだけ……な。俺は一年中温暖な気候で育ったから寒いところには慣れてないが、すぐに慣れる。」
フランは自分の上着を俺の肩に掛けた。体温で温められていて、生ぬるい。けれど、どこか懐かしい。
「フランは寒くないのか?」
「うん!おれ、ここの生まれ育ちだし。それに、おれ自身が冷たいからさ。」
「……そう……か。」
なんだかフランの笑顔が怖い。表情と言ってることが合ってないというか。
どんな束縛をしていようとも、人は人の人生を全て知ることは出来ない。本人自身も忘れるから。
でも、フランは全て思い出したように見える。50年前なんて、俺でさえよく覚えてないのに。
「ジャレッド、ここら辺が良いんじゃない?乾燥しすぎてもないし、草木なんて何一つないよ。」
「そうだな。危ないから離れてろ。古代は今よりも魔法が栄えて居たからな。」
「うん!魔力が足りない時はおれに教えてよ?代わりにやるから。」
「必要ない。」
最上級魔法を使いこなせるフランの手伝いなんて要らない。俺は、俺1人の実力で今の地位に居る。
ボンッ!!
古代魔法は大きなキノコのような煙を上げながら大爆発を起こし、暴風が吹き荒れ、鼓膜が破れそうなほど音を出した。
きっと隣町まで被害が出るな。これはまだ完全再現出来ていないのにこの威力。流石と言うべきか。
「最上級魔法を合わせてもこの魔法の威力は上を行くよ。魔力も大量に消費したんじゃない?大丈夫?ジャレッド。」
「ああ。ただ……この後が大丈夫じゃないかもしれない。」
さっさと証拠隠滅を済ませて帰った方が身の為だな。苦情を言われるのはもう懲り懲りだ。
隣町には大量のお金をばらまいておくか。フランが持ってそうだな。よく新入りにせびってるし。
「フラン、外貨は持ってるか?」
「うん。おれはこう見えて用意周到だからね。」
フランから手持ちの外貨を全て受け取り、隣町にばら蒔き、苦情を言われる前に帰った。
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