第15話 50年振り
「アムアの魔法使いだ。城門を開けてくれ。」
「なにか証明出来るものはございますか?」
何事もなくフェートン王国にあるフランの領地に到着した。
アムアの魔法使いと証明出来るもの……か。それじゃあ、アレしかないよな。
「この人を見覚えあるか?」
「んああ?なんだこの女みてぇな奴。見覚えなんてねぇぞ!!」
え、なんでしらな……(50年前)
なるほど。もうそんなに経っていたのか。
フランはぼーっとしててなにか言う気配がない。ただ城を眺めている。思い出したのか?
「フランクリン・クラウスを知らないのか?」
「フランクリン・クラウス?あー、聞いたことあるな。確か……50年前に偉大なクラウス侯爵家と、婚約者だった男爵令嬢を裏切ってアムアに行った元後継者だったか?」
「……そうだ。」
フランの瞼は大きく開かれ、澄んだ青い瞳は、曇っていった。全て思い出したらしい。
だが、すぐに顔をしかめた。……どうやら、良い思い出では無かったらしい。
「あ……あら……フランクリンじゃないの!!!」
城の大きな入口から、やせ細り、杖を突いている老婆が走ってきた。
「……フランの母親か?」
「うん。でも、愛情を注いでおいて、おれのやりたいことは何一つさせてくれなかった侯爵夫人。」
前にフランは似たようなことを小娘に言っていた。「愛されるだけの不自由はつまらない」と。無意識に親を思い出していたのか。
「ここに帰ってきて、当主になってくれるって、夫は、お母様たちは信じていたのよ!!!」
侯爵夫人はフランに抱きついた。けれど、そっとフランは侯爵夫人を遠ざけた。
これは、50年振りの再開による親子喧嘩か?
「フランクリン?」
「戸籍上おれたちは他人でしょう?おれの家族はモノクロだけです。」
「フランクリン……あなたはなにがそんなに気に入らないの?あんなに愛情たっぷりで、好きなだけ勉強出来て、なに不自由の無い生活だったじゃない!!」
愛情たっぷりって自分で決めることじゃないと思うけどな……。そういえばフランって勉強嫌いだよな。貴族が好む味が濃くて油っこいものも大嫌いだし。
よっぽど貴族の生活が嫌だったんだろうな。そしてそれと同じくらい、退屈に感じていたのだろう。
他人の俺は深く考えない方がいいか。出身身分の差もかなりあるし。
「北部をしばらくの間お借りします。閣下にもそれをお伝えください。そして、おれの目の前に現れないでください。今は自由な生活を満喫しているので。」
去り際にフランが冷たい声で侯爵夫人に言った。なんだか気まづい。
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