第11話 価値観という呪縛

「……で、ジャレッドについては未だ手がかりが掴めていません〜。」


「そうか。ご苦労だった。」


シャキッボリボリ


ルアの報告を聞き終え、はじかみを食べながら天井を見つめた。ほんのりと暖かくて、弱い日差しが窓から差し込む。


久しぶりに晴れた。何週間も大雨が続いて、鬱陶しかった。


「師匠、アムアに女性は私と師匠の他に居ないのですか?」


「居るには居るな。かなり少ないが。」


「なぜですか?」


なぜと言われても……強いて言えば、価値観だな。昔の高貴で身勝手な男が決めた、身勝手な価値観がそのまま人間の固定概念に囚われてる。


でもそんなこと言ったってこの歳じゃ分からないよな。


女子おなごはオシャレというものが好きだからじゃないか?弟子もドレスやアクセサリーが好きだろう?」


「アクセサリーは好きというより、家族が可愛いと褒めてくれるから付けてるだけです。ドレスは王女だから女の子らしくしないといけないからです。」


女らしくという価値観が女の魔法使いを少なくさせているとは、弟子はまだ分からないだろうな。


分かるとしても、言う気はないが。


「……コーデリアという女の魔法使いに会ってみろ。弟子の考え方を直してくれるだろう。」


「……?はい!」


アイツなら、衝突はあるが、いつかは弟子と仲良くなれるだろう。そして、自身の当たり前を、弟子にも教えこんでくれるだろう。


コンコンコン


弟子が執務室を出て行って少しした後、ドアが3回叩かれた。ジャレッドとフランクリンが到着したらしい。


「入れ。」


「……失礼致します。」


ドアを開け、ジャレッドがそっと執務室に足を踏み入れた。緊張しているのかロボットみたいな動き方だ。


ジャレッドの後ろにフランクリンの姿は無かった。今頃応接室でルアと世間話しているのだろう。


「ーーですので、大陸への許可を頂きたいのですが。」


「素晴らしい。今回の実験はアムアにとってもかなりの利益となる。ジャレッド、期待しているぞ。」


「……!!ありがとうございます!!」


本来ならここは「成功したらお金でも宝石でもなんでもやる」って言いたいところなんだけど……。


だがアムアは資源に乏しく、宝石などの鉱物は滅多に掘ることが出来ない。しかもお金はないし、大陸との貿易もほとんどしていない。


しかも魔法使いは宝石とかに全く興味がないし。フランクリンも。


だから身分の高い者が言うカッコイイセリフなんて言えないんだよな。残念なことに。



一方その頃、フランクリンは……。


「オルラちゃんがコーデリアに会いに行った……!?」


オルラの不在をルアから聞いてショックを受けていた。

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