第8話 古代魔法
「……親友としては……だ、だだ、だい……す……き……」
「え?なんて?声が小さくて聞こえないな〜。」
「し……親友としては好きだって言ってんだろ!!ああ、もう!!一回で聞き取れよ!!」
おれは唖然とした。ジャレッドの口から、こんな言葉がはっきり出るとは思わなかった。
いつものジャレッドなら、間違いなく「嫌い」と即答していたはず。
「なんか今日は、50年にも渡るおれとジャレッドの仲が、変わった気がする。オルラちゃんのお陰かな?」
「……関係ない。あんな小娘なんか。この研究が一段落したら大魔法師様の邸宅に向かう。それまで待っとけ。」
嬉しそうに研究するジャレッドをひたすら見つめるのは、すごく楽しい。そして、研究に成功したジャレッドを見るのは、もっと楽しい。
でも、最近は研究の内容が物騒。攻撃力の高い古代魔法の復活を試みていて、その実験のために、大陸へ行くらしい。
「でも古代魔法をどこで使うの?大陸でこの実験したら宣戦布告してるも同然だけど。」
「……フランの領地に人が住めない土地があるじゃん。ほら、どこだったっけ。どっかの王国にあるフランの領地。」
「おれ、大陸に領地なんて持ってないけど。ジャレッドが言ってるのは記憶を消す前のおれなんじゃない?」
「……そうだったな。フランの両親はまだ生きているはずだ。いくらアムアといえど、記憶魔法は完全ではない。一目見たら思い出すだろう。」
アムアの規則は厳しい。アムアに住むことになったら苗字を捨てなければいけないし、記憶も捨てなければならない。
だが、記憶魔法もまだ完全体になった訳ではない。皆、無意識的に前の記憶を話しているし、思い出の場所を訪れば、全て思い出すこともある。
「……終わったぞ。範囲は76%、威力は64%再現できた。」
「威力はともかく、範囲76%は流石に人的被害出ない?」
「……領主に許可取ってからやるし、人は住んでないから大丈夫だ。」
絶対大丈夫じゃない。古代魔法はかなり攻撃に特化してるから多分土地がとんでもないことになる。
大魔法師様から許可をいただけるかも怪しいくらいだよ。こんなのを大陸で実験するなんて。
雨が降り出した。ジメジメした大雨。とても出られそうにない。
「あれ、降って来ちゃった。ジャレッド、帰れないから、今夜は泊めて?」
「2つも布団は無いからソファーで寝ろよ。」
「うん!」
けれど、雨は何日も続いた。おれがジャレッドの研究所を帰ろうとする頃には、毎回かなり降っていて、何日も泊めてもらった。
オマケに、ジャレッドが後回しにしていた研究がかなり多く、大魔法師様へ許可をもらいに行くのも遅れた。
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