第6話 魔法石
「そういえば魔法の勉強をしに来たんだったね。1つ教えてあげるよ、どんなに魔法が使えなくても、魔法石は使わない方が良いよ。」
「魔法石……ですか?」
なぜかジャレッドさんの肩が一瞬だけピクリと上に上がった。寒いのかな。
魔法石は魔法石の中にある魔力を人間が吸い取り、一時的に魔力を増幅させることが出来るすごい石。
でも魔法石は王国では使っている人ばっかりなのに。どうしてアムアでは使わない方がいいんだろう。
「なぜ魔法石は使っちゃいけないのですか?王国では広く普及してますよ?」
「大陸では研究が進んでいないからじゃないかな?難しいこというけど魔法石はね、人体に悪影響を及ぼしやすくて、依存性が高いんだ。使ったらきっと大魔法師様に……」
「やめとけ。」
フランは何かを言おうとしていたけれど、ジャレッドさんが慌てたように止めた。
よく聞こえなかったけれど、フランはジャレッドさんにきこえないような小さな声で、実力重視のアムアにとって魔法石は違法だよって言ってた気がする。
フランの腰に着くほど長いシルバーの髪があたしの肩に垂れた。あたしの金髪とは違う輝きの美しいシルバーの髪。そして、海のような優しい青い瞳。
「あっ、ごめんね。結んでくれば良かったな。」
「大丈夫です。人の髪を見るの、好きなんです。フランだけじゃなくジャレッドさんの……」
「……チッ!!」
ジャレッドさんは舌打ちをして、行ってしまった。なにか気に障るようなことをしちゃったかな……。
フランは呆れ顔。慣れている様子だった。
「全く。ジャレッドのことは気にしないで。いつものことだから。」
「……ジャレッドさん、体幹はすごいのに、歩く時ふらふらしてますね。寝不足なのかな?」
フランは腕を組んで、去っていくジャレッドさんの後ろ姿をただひたすらに見つめている。
その姿はまるで天女のようだった。男の人に天女っていうのもアレだけど。
「ジャレッドは寝ることよりも研究や勉強を大切にしてるからね。おれはそんな努力家なジャレッドを尊敬してる。おれは天賦の才だけでここにいるから。」
「魔力は産まれた時に全て決まるのですか?」
「いや、後からでも一部の人はどうにか出来る。一部の人はね。」
そういうと、フランは追いかけるかのようにジャレッドさんのところへ走って行ってしまった。
「いつか外貨ちょうだいね!」
フランは去り際にそんなことを叫んだ。『がいか』って、なんだろ?あとで師匠に聞いてみようかな。
とにかく、ジャレッドさんも、フランも、不思議な人だった。
ジャレッドさんは、しっかりした自分の意思を持っている気がするし、フランは、物腰の柔らかい人。
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