第3話 紅白はじかみ

「では、お兄様、お父様、お母様、行ってきます!帰る時には、おみあげをたくさん買ってきますからね!」


「オルラ!!」


王族達は手を振って涙を流し、別れを惜しみながら船の出発を見送った。


本来ならば、王国と魔導国は行き来できない。アムアが閉鎖的で、海の真ん中に位置しているため、他国との交流が無いに等しく、国際的にも孤立している。


アムアの人間も同じだ。


しかし、今回は王女の誕生日パーティーがあるからと、小さめの船を一艘だけ出し、私だけが大陸に来た。


船内のソファーに座りながらブラインドを開けた。


「私のことは師匠と呼ぶと良い。私も、弟子とは楽に話すとしよう。」


「はい!師匠!」


頬杖を突きながら隙間から海を見つめた。弟子も、隣の席でキラキラと目を輝かせて私を見つめている。


別に魔法を見せるとかじゃないんだけどな。自由にしてて良いのに。


船に積んだ食料庫から好物のはじかみを取り出し、噛みちぎる。


「なんですか?それ。」


「紅白はじかみという。味はただの生姜だ。食うか?」


「食べたいです!」


袋から紅白はじかみを1本取り出し、弟子にあげ、可食部を簡単に教えた。


シャキッ


弟子は1口だけ白い部分を自分の長い金髪と一緒にかじり、すぐに水で口をゆすいだ。好きではないらしい。


「辛い!」


「そりゃあ、はじかみだからな。生姜なんだから辛いに決まってるだろう」


「これが好きなんですか?」


「昔、私の師に食わせてもらったから好きだった。今は歳で味覚が薄くなったから、好みは関係なく癖で食べている。」


「師匠は今何歳なんですか?」


オブラートに全く包まれていないド直球な質問。7歳児らしい。


まあこういう遠回しな言い方は私も苦手なのだが。


「……魔法使いは皆寿命が長く、外見の老化が遅いとだけ言っておこう。アムアでは私が最年長だ。」


「そうなんですね!」


たった7歳の弟子に数えないが弟子と私は最低100歳以上歳の差があるとは流石に言えない。


しかもアムアの年長者達とも50歳は離れているというおまけ付き。あはは。


「あとどれくらいかかるのですか?」


「何も無ければあと1ヶ月で着く。大きいと思っていた大陸なんて、アムアでは全く見えないぞ。」


船上に上がり、視界が海と大陸でいっぱいになった。小さな水飛沫が身体中に飛んでくる。


弟子は水平線まで続く海をうっとりとした表情で眺めた。


「海は、初めて見ました。王国の外に来たのも初めてだけれど。」


「アムアは小さな島国だから、こんな風景なんかいくらでも見られるぞ。」


-------❁ ❁ ❁-------

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