第10話『イチャコラ』


 俺はエレナの准教授室に遊びに来た。

 エレナは『パソコン型グリモワール』である『パソグリ』を両手で操作し、仕事をしていた。

 俺はというと、大学に提出するレポートを『パソグリ』で作っていた。

『パソグリ』って便利だよな。昔は、筆と紙で仕事をしていたが、今では『パソグリ』で、ちょ、ちょい、の、ちょ。で、簡単に書類を作る事ができる。

 エレナは魔導術学部回復術科で准教授として働いている。

『基礎回復魔術』と『回復魔術理論』などの科目を担当している。

 俺は『回復魔術理論』を選択しているので、彼女に指導してもらえる。

 エレナの教えた方は上手で、わかりやすく、勉強になる。

 指導下手な俺にとっては、お手本として、大変、参考になった。

 俺はすべてのレポートを作り上げ。『パソグリ』をたたむ。


「エレナ先生」


 俺は彼女の背後から抱きしめる。いわゆる、バックハグだ。


「何ですか、ダイ様」


 彼女はフフと笑いながら、仕事をする。

 エレナはいい香りがする。甘い花の香り。


「先生、いけない事、しませんか?」

「いけない子ですね。ダイ様は」

「俺は子供じゃないですよ? それに、先生より年上だ」

「そうですね」


 彼女は『パソグリ』の操作を止め。ゆっくり立ち上がる。

 俺は、先生の髪を結いでいるゴムを外す。すると、ピンク色の長い髪が解ける。

 彼女の眼鏡をゆっくり外し、机に置く。


「優しくしてね?」


 艶っぽい小声で囁き、潤んだ熱っぽい、上目使いで俺を見る。

 俺は微笑み、彼女の長い髪をキスをする。


「善処する」


 そして俺達は、甘く激しい夜を過ごした。



 次の日。俺は大学内にあるシャワー室で汗を流していた。

 昨日は、すげぇいい夜だった。

 エレナの事がもっともっと好きになる。

 想像してたら、ヤバいな。エレナに会って、イチャコラしたくなる。

 そろそろ、シャワー室のドアを開けた瞬間である。

 誰かが、俺を抱きしめた。隠密スキルでも使ったのか?

 まったく気配がなかった。俺とした事が、隙を作るとは。


「ダイ様!」


 俺の知っている女性である。そう、ディアナだ。


「ディアナじゃないか。どうした?」


 彼女は俺から離れ。顔を上げる。


「ダイ様! わたしを愛人にしてください!」


 おいおい、こんな所で頼むような内容じゃないぞ?

 しかも、俺は裸だし。


「おいおい、また、何を言ってるんだ?」

「エレナばかりずるです! わたしも主様の寵愛を受けたいです!」


 昔のディアナは真面目でクールだったのに、今では情熱変態ガールに変貌したんだよな。


「お前も、俺の事が好きだったな」

「そうですよ!」


 どうするべきか? 拒否するのは簡単だが。

 その後のフォローが面倒だ。


「だったら、エレナの許可を取れ」

「許可を取れば、いいですか!?」

「エレナが承諾してくれる可能性は低い。それでも、お前は説得できるのか?」

「それは……」


 俺的にはディアナを愛人にしてもいい。だが、エレナは嫌がる可能性は大である。


「自信がないなら、止めとけ」

「いえ、止めません! 説得します!」


 彼女は本気みたいだ。


「そうか、よし、じゃあ、頑張れよ。ディアナ」


 俺はそう言い残し、シャワー室から出る。

 ていうかさ、俺、裸なんだけどな。


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