第741話 アーサーの提案で、俺1人対ワーウルフ1人+

 アーサーの提案で、俺1人対ワーウルフ1人+カボ4機の1対5の模擬戦を行う事になった。


 まぁ、楽しそうだから何でも良いや。

 それにしても、レベルトレースシステムのない機体で1対5とか、中々に厳しい気もしなくもない。


 ……いや、そうでもないな、多分。


『紹介しましょう。皆さんも面接の時に顔を合わせていますよね? こちらアーバン=ネフィス殿です』


 俺は今到着したという定である。

 最初からカボルドが俺だったと分かると、インチキだと騒がれて面倒になるかも知れないしな。


『アーバン殿が特別にお相手してくれるそうです。条件は5対1で構わないとの事。実際にアーバン殿はそれほどに強いと思って下さい』


『……胸をお借りします』


「よろしくお願いします」


『わーい! アーバン様と遊べます!』

『これは他のカボ達に自慢できちゃいますね!』

『設定は1のままですか?』

『3でもアーバン様なら余裕ですよね?』


 カボ達にはレベル設定がされており、先ほどまでのカボが最弱の1。最高値が3だ。


「……まぁ、3で構わないよ」


 ここで1のままでお願いしますとは、格好悪くて言えないしね。


『ほら! 流石アーバン様です!』

『じゃあ3に切り替えます!』

『よぅし! 全力でやるぞー!』

『おおー!』


 ……なんかカボ達、気合入ってるな。


 なんだね? キミ等は俺に恥をかかせたいのかい?

 良いだろう、正面から叩き斬ってやろうじゃないか。


「それじゃあ始めようか。モーリス殿、合図をお願いします」


『畏まりました。それでは、両者準備はよろしいですか? …………はじめ!』


 開始の合図と共に、俺は一気にリョウサーンを前進させる。


 カボ達は四方に散らばると、四方から俺目掛けてブームライフルを乱射する。


 残ったワーウルフは正面に立ったまま移動せず、ビームライフルを放ってきている。


 俺はそのままワーウルフに突っ込みながらビームサーベルを起動した。


 そして飛来するビームを斬り捨て、あるいは体を捻って避けならが、真っすぐにワーウルフの乗るリョウサーンと距離を詰める。


『なんだあの動き! 人間じゃねぇ!』

『ギリギリでびーむを避けてる……』

『というか、大半は切り捨ててるぞ……』


 そんな声が聞こえた。

 そりゃぁ、リョウサーンはゴーレムであって人間ではないからな。

 生身だったらもっと簡単に避けられるのである。


 俺はダっと地面をけるのと同時にスラスターを全開にし、加速したリョウサーンで相手リョウサーンに対し膝蹴りを食らわせる。


 ゴっ――

 

『うお!?』


 相手リョウサーンが吹っ飛ぶが、ここでは仕留めない。


 俺は急いで吹っ飛ばしたリョウサーンの後ろに回り込んで、頭を掴み持ち上げると、そのリョウサーンを盾にしながらカボの乗るリョウサーンとの距離を詰めた。


『ず、狡いですー!』

『これじゃ攻撃できません!』

『よ、横からな――あ、スピードを不規則に変化させてる?!』

『これじゃ横から撃っても下手をしたらワーウルフさんに当てちゃいますよ?!』


 カボ達には、ロボット三原則は組み込んでいない。

 それは俺にとって、カボの命の重さも、俺と大して関りのない人の命の重さも、大した差はないからだ。


 それでも、カボは性格的にここで人質ごと撃つことを躊躇う事は知っている。

 それが仮に、中の人間にダメージを与えないと分かっていてもだ。


 ふふふ、撃てる者ならば撃ってみるが良い。


 という事で躊躇っているカボ達を落としていく。


 1つ、2つ――


『く、くぅ――! このままじゃ直ぐに全滅です! ワーウルフさん、ごめんなさい!』

『攻撃です!』


 お、流石に撃ってきたか。

 まぁ、さっきも言ったが、ここでワーウルフの機体ごと撃ち抜こうが、ワーウルフにはダメージはないからな。


 という事で、俺は遠慮なくワーウルフ盾でそのビームを受けつつカボ達に接近する。


 残り2機だけならばこれで十分。


 1機をビームサーベルで真っ二つにし、最後の残り1機。


 俺はそちらに向ってワーウルフ盾をぶん投げる。


 カボのリョウサーンは何とかそれを左に躱すが――

 残念、そっちに避けるのは計算通りなのだ。


 そういう訳で、俺の放ったビームサーベルの置き突きが、カボの乗るリョウサーンの胸部を貫いて試合終了。


 がはははは!


 俺に勝とうと言うのならば、ガステアでも連れてくるんだな!


 がはははは!


『――アーバン殿、実力を見せつけるのに、その戦い方はどうかと……』


 アーサーが通信でなんか言って来た。


 勝ちは勝ちだが?


 そう思うのだが、ギャラリーからは拍手はない。


『ブーブー!』

『卑怯です!』

『再戦を要求します!』

『次は人質はなしでお願いします!』


 どころか、カボ達からはブーイングすら上がる始末である。

 こ奴等、5対1で戦っておいて、なぁにが卑怯だ。

 そっちの方がよっぽど卑怯ですぅ!


 ぶぅぶぅ!


 が、これでは周りも納得しないという雰囲気になってしまい。


 結局この後、先にアーサーが倒した新兵全員と同時に戦う事になった。

 再戦を希望していたカボ達は流石に抜きである。


 1対26である。

 傍から見たらいじめにしか見えんが?


 ええ、もちろん全員ボッコボコにしてやりましたよ。


 なんか学園で卒業直前に行った、教師達との戯れを思い出して、ちょっぴり懐かしい気持ちになった。


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