第742話 珍しくニーナが相談があるというので
珍しくニーナが相談があるというので話を聞く事になった。
今日はヌゼも一緒だ。というか、このメンバーならオマケは俺か――
「それでニーナよ。話とは?」
ヌゼが切り出すと、ニーナは溜める事なく、直ぐに本題に入った。
「実は、私も何か仕事がしたいと思いまして――……」
アーキセル王国では、基本的に貴族の女性は仕事をしない。
これはあくまで基本的な話であって、全員仕事をしていないわけではない。
現にサリーも、服飾関係の仕事で結構儲けていたはずだ。
「なぜ急に?」
ヌゼがそう質問する気持ちも分かるが、タイミング的には新しい国に移って環境が変わったからと考えるのが妥当だろう。
「今までは社交の場などに出席して、それなりに忙しくしていたでしょう? もちろん、これから外交の場に出席する事は多くなる可能性は高くなるとは思いますが――その……現状暇を持て余していまして……」
……ただ暇をしていただけだった。
家事はメイドがやるし、社交界への顔出しもしなくなった今、やる事がないらしい。
いや、建国したばかりでドタバタしてそうなこの時期に、そんな事ある? と思うかもしれないが、どうもあるらしい。
基本的に、ヌゼやチラズは、各種調整の為にアーキセルの貴族や王家とのやり取りで忙しくしているし、ヨハンに関してはそろそろ倒れるんじゃないかと思う程忙しそうにしている。
そんな中でも、俺やコーネリアは基本的には何にも縛られずに自由にさせて貰っている感じだ。ニーナもそんな感じ……ん? いや、ニーナもそれなりに色々と忙しそうにしているのを見た気がするけど……
「アーキセルは基本的に男社会ですからね……女の身で出来る事は大抵終わりました。まぁ、私がやったのはヤクト様の化粧関係と、服ちゃん様の服飾品の販売経路の維持、確保……それと関税に関する事を少々……それぐらいですが」
十分仕事してない?
「それで、ニーナお義母様は、一体どんな仕事をしたいんですか?」
「それが……お恥ずかしながら具体的に何という訳でもなく……ただ、アーバン殿がこの国の為に毎日寝る間も惜しんで頑張っている姿を見ていると、私も何かしなければという焦りの様な物を感じまして――」
ん? 俺が寝る間も惜しんでこの国の為に働いている?
……んん? なんの話だろうか?
正直俺は連日遊び歩いて――もとい、視察ぐらいしかしていないが……
後はやりたい事を好き勝手やらせて貰っているぐらいか。
「しかしな、ニーナよ。いきなり仕事をくれと言われても……いや、優秀なお前なら、何をやっても完璧にこなすとは思うのだが……婿殿、何かありますか?」
ぶっちゃけ幾らでもあるとは思う。
施設を造るだけ造って、運用は殆どカボ任せだからな。
例えば、先日つくったゴーアレムバン軍。
これの運用は基本的にヌゼとヨハンに任せようと思っている。
そう人間は基本的にこの2人だけ。
しかもヨハンは基本的に携わらない。
訓練などの際に、調整や許可取りなどの時にちょっと話が行くぐらいだろう。
他に言えば、カボだらけの施設は幾らでもあるので、管理する側でもスタッフとしてでも幾らでも仕事はあるのだが……
ニーナがやりたがっている仕事とは、なんかちょっと違う気がしなくもない。
とはいえ、ニーナがどんな事をやりたがっているのか、ちょっと分からないんだよなぁ。
……そう言えば、アーキセル王立学園の副学園長って女性だったよな……
「例えばですけど、ネバン達が通う学校の校長先生なんて、やってみるのは如何ですか?」
……言っといてなんだけど、これ多分違うな。
ニーナはもっとこの国の中核的な仕事に携わらせて欲しいと言っているんだと思う。
「ああ……やっぱり今のは――「良いですね」……えぇ……」
ニーナは手をパンと叩くと、ニッコリと微笑んだ。
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