閑話 騎士達の実戦

【ナジェ】


「…………ムーゼンは視界が悪い。ですが、あなた方の視野が狭いのも問題」


 それは、俺達の戦闘記録映像をみたモリアの感想だった。


「視野が狭いってのと、視界が悪いってのはどう違うんだ、隊長」


 ニットが尋ねる。

 このニットとは学園時代からの腐れ縁で、長年連れ添った相棒みたいなもんだ。


「…………ここ」


 映像を一時停止し、モリアが画面を指で指し示す。


「モンスターが移動しているな」


 最初は全部正面にいたモンスターだが、一部のモンスターが左右に分かれて移動しているのが分かる。


 画面は再び動き出し、先ほど左右に移動したモンスター共が、俺達のムーゼンの後ろに回ったところで再び停止した。


「…………ここ。正面の敵しか意識してない」


「えっとつまり……例え視界から消えたとして、いつのまにかモンスターの数が減っている事にすら気が付けてない、ってこと?」


 メルフィに問われ、モリアが頷く。


「…………対処出来た」


「視野を広く持て――ねぇ……」


 言われて、はい分かりました。って簡単に出来る事でもない気がするが――

 意識はしてみるか。





『ナジェ! 敵の数が減ってる!』

 

 ニットの叫ぶ声が聞こえた。


「分かってる。同じ手とは芸がねぇ連中だ!」


『別の個体だけどねぇ』


「へっ――トラウマで小便チビってた割に、軽口を叩くじゃないか」


『うわ?! あんたデリカシーなさ過ぎでしょ!? セクハラよ、セ・ク・ハ・ラ!』


『2人とも、下らん言い争いをしている場合じゃないぞ。先ずは孤立した前面のモンスターを速やかに撃破する! ナジェとニットは反転して背後からの攻撃に備えろ。左右にも気を配れよ!』


「簡単に言ってくれるね」


『簡単だろ? 盾の扱いもあれだけ練習したんだ。ここで失敗したらモリア隊長に笑われるぜ』


「それもそうだな……来いや、モンスター共! テメェ等の攻撃なんざ、全部捌いてやる!」




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【第2王子】


「モリア、ムーゼン部隊の損耗は?」


『…………被撃破なし。損傷は軽微。魔力は2割程度の消耗だそうです』


 通信機から、モリアの報告が流れる。


「ほう。それは随分な成長じゃないか」


 モリアに訓練を任せたのは、騎士共が不満から、現状を覆す為にやる気を見せるかもという理由も含んでいたが……モリアの奴。俺の見立てよりも乗り手を育てる才能があったのかも知れんな。

 口数が少ないのがネックになるかとも思ったが――


「上手くやっているようだな」


『…………言うほど、悪い人たちじゃないです』


「……そうか」


 奴等も、立場や環境が悪かっただけなのかも知れんな。

 ……とは言え、まだまだ鍛え直す必要はありそうだがな。


「とりあえず、上司であるモリアにあの口の利き方をするのは直させるか」


『殿下』


 通信機が、モリア以外の人間の声を流した。

 これは――


「どうした? フローラ=サン」


『あの程度戦えるのでしたら、魔力源の確保の任務に、彼等を同行させても問題ないと思いますが――』


「そうだな。とはいえ、今回は訓練の一環として。既に戦闘経験のあるモンスターを態々探してあてがっただけだ。本人達には任務に同行させると伝えてあるがな――」


『初見のモンスターとの戦闘で、今回と同等の戦果が見込めるかは判断が付かない。という事ですね? 始めのうちは我々でサポートをすれば大丈夫かと存じます』


「そうだな……モリアはどう思う?」


『…………フローラ様と同じ意見です』


「よし。では近日中に、奴等を任務に同行させる。今度は本当に、な――ただ、今はもう少し、勝利の味を噛みしめさせてやろう」


『そうですね』


『…………はい』

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