閑話 騎士達のお仕事

【ニット】


 魔力を生み出すモンスターの素材。

 それが、第2王子が納めるカドゥレーンの主な収入源になりそうだという話は、大分前から聞いている。


 何もないからと、第2王子をキルロン送りにした貴族達は、今更になってやはりキルロンは第2王子に任せるには荷が重すぎる、などとほざき始めているそうだ。笑える。


 そんな魔力を生み出す素材が取れるモンスターの討伐に、俺達は同行する事になった。


「そのひょろ長い魚ってのは、先日のさる型モンスターとどちらが強いんですか?」


 俺は、今回の任務について説明してくれているフローラ=サンに尋ねた。

 フローラの横には、特に何をしゃべる訳でもないケイト=フェメルが立っている。

 ……この2人、いっつも一緒にいるな……百合という噂は本当なんだろうか……気になる。


 2人ともスゲェ美人なうえ、あの歳で婚約者なしだって話だ。

 出来ればお近づきになりたいんだがなぁ……


「ひょろ長い魚……我々はレインボースカイフィッシュと呼んでいますが、そちらの方が上です。とは言え、これは強さというよりは戦いにくさに問題があります。我々に飛行可能なゴーレムはなく、相手は上空から魔法を撃ち放題ですからね。とはいえ、我々の敵ではありませんが――ムーゼンでは、そうはいかないかも知れません」


「上空ってのは、ムーゼンのビームガトリングガンの射程より上空って事でしょうか?」


「いいえ。ビームガトリングガンでも届く範囲に居る事が殆どです。それには遮蔽物もありませんし、慣れれば撃ち落とす事は難しくありませんが――ここで注意点が1つ。出来るだけ商品――つまり羽には傷をつけないで下さい。損傷率が高い羽は魔力が生み出せない事が判明しています」


「あの……そのレインボースカイフィッシュといのは、どのぐらいの大きさなんですか? 羽を避けて攻撃するのは難しい大きさなのでしょうか?」


 質問したのはメルフィだ。


「全長15メートルほどです」


「なんだ。全然デカいじゃないですか。それなら余裕ですよ」


 俺の自信満々の言葉に、けれどフローラは笑顔を見せない。


「相手はビームガトリングの射程圏内とはいえ、かなりの上空を飛んでいるのですよ? 豆粒――とまでは言いませんが、かなり小さい的だと思って下さい」


「あ……はい」


「ぷぷ、ニットてば怒られてやんの」


「うるさいぞ、メルフィ。別に注意されただけで怒られてない」


「では、今回の作戦の概要を説明しますね。各員搭乗型ゴーレムに乗った状態で街を出ます――――」


 説明を受けた後、キルロンの塀の外で、上空にいるモンスターとの戦闘を想定した模擬戦を行い、この日は就寝した。



 翌日……レインボースカイフィッシュとの戦闘は、中々に苦戦を強いられた。


「く、くそ! 当たらねぇ!」

『小さいだけじゃなくて、ちょろちょろと!』

『うお! 水柱の魔法を放って来やがった!』

『避けろ!』


 訓練では、フローラのゴーレム……えっと、デュナミス? のバブルボールって魔法を撃ち抜いていたんだが……

 それとは全然違う。


『動きを先読みして下さい。目で見える場所に撃ってもビームが到着する頃には体は動いていますよ』


「さ、先読みなんて無理だろ!」

『あれ、見てから避けてるんじゃないんですか?』


『違います。ただ外れているだけです……ケイト、見本を――』


『はい! お任せください、フローラ先輩!』


 フローラの指示で、ケイトの乗るレッサーHMGが上空に向かって魔法銃を構える。


 一旦狙いを定めたと思ったケイトだが、少しだけ銃口をズラすと、こちらもビームの魔法を放った。


 放たれたビームはレインボースカイフィッシュの少し前方に向かって飛んでいる様に見える。


 外したか? と思った次の瞬間――

 まるでレインボースカイフィッシュが自らビームに突っ込んでいったかのように、ビームが頭部に命中、レインボースカイフィッシュは絶命し、降下を始めた。


 ドスン――


 地面に落ちたレインボースカイフィッシュに近寄って、その姿を確認する。


 上空では確かに小さかったそれは、事前の情報通り、15メートル近い大きさだ。

 羽はそこまで大きくないが……それでも2メートルぐらいはあるだろう。

 その羽には一切傷はついていない。


『ケイトさん……ただのフローラさんの取り巻きだと思ってたのに……実は凄い人だったのね』


『こら、そこの女子。聞こえていますわよ』


『さぁ、感心してないで、上空にはまだ別のレインボースカイフィッシュが残っていますよ?』


 おっと、そうだった。

 モリアが援護してくれるとは言え、油断は禁物だな。




 この後、4時間ほど戦って、ようやく少しコツが掴めた俺は、やっとの事、レインボースカイフィッシュを1匹撃墜する事に成功した。


 ……見事にビームが羽に当たってしまったが――


「初めてにしては上出来です。この調子で行けば、あと4・5回出撃すれば、立派な戦力としてカウント出来ると思います。ただ、なんどかモリアの牽制がなければ危ない場面もありました。次はもう少し防御や回避面にも注意を払いましょう。それでは私達は第2王子殿下に報告をしてきますので、皆さんは先に戻って休んで下さって結構ですよ。お疲れになったでしょう」


 そう言って、フローラとケイトは去って行った。

 ケイトはフローラの腕にしがみつきながら……


 やっぱ百合か……

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