閑話 帰国後の留学生達(下)
【留学生B】
いよいよルスモスの起動実験の日だ。
ドワーフ達のお陰で、ルスモスが形になったのは嬉しい偶然だった。
「ほれ、呆けちょらんで、さっそくゴーレムを動かしてみんか」
「まさか、搭乗型ゴーレム造りに携われるとは思っちょらんかったが――」
「採掘班の連中が、いつもいつも搭乗型ゴーレムに乗れる自慢をしてきてウザかったからのぅ」
「今度は儂等が、自分達は製作に携わったと自慢しちゃるんじゃ」
「その為には、そのゴーレムがあんまりショボかったら話にならんでの。儂等が納得のできるゴーレムが出来るまで付き合ってやるわい」
……アーバン先生は――というか、アーキセル王国は、ククロフに対しては搭乗型ゴーレムを貸し出すという方法を取っているらしい。
ならば、ウェインもそうすれば良かったのでは? とは、自分の立場からしたら口にできる話ではない。
「そいで? 誰が乗り手を勤めるんじゃ?」
「試験運転だから、別に乗り手は誰でも良いけど……やっぱり、リ・マグじゃないかな? この中じゃ一番操作が上手いしね。最初は1人で搭乗して、それが上手くいけば今度は2人でって感じじゃないかな」
「俺か? ……分かった」
リ・マグがルスモスに乗り込むと、ルスモスはゆっくりと胴体を持ち上げ始めた。
「お、おお~。アーバン先生の力を借りずに、俺達だけで造ったゴーレムが動いた。なんか感動だなぁ」
「動いたて……ちょっと車高を高くしただけじゃろぅが……」
「まぁ、感動するのは分かるの」
「こいつがモンスターを蹴散らす姿を想像すると、ワクワクするの」
「そうじゃのぅ。儂等を追いかけ回しよったあのくそモンスターをボコボコに出来たら、きっと気持ち良いじゃらろうのぉ」
「お、そりゃ良いのぅ。最終的にはあのモンスターを倒せるゴーレムを目標にすると良いかも知れんの。ウェインの、お主等はどれぐらいのモンスターを倒せるゴーレムを目標にするつもりなんじゃ?」
ドワーフに尋ねられ、自分達はお互いの目を見て頷きあった。
そして――
「「「ベヘモス!!!」」」
リ・マグ以外の声が重なった。
……リ・マグは乗りが悪いな。
そういうところが自分達に中々馴染めなかった理由だぞ? 反省しなよ?
「べ、ベヘモス?!」
「そりゃまた……随分と大きく出たのぉ」
「大き過ぎじゃ。あまり大きな目標は目標とは言わんぞ?」
「そうじゃのぅ。目標を立てる理由は、そこに向かって進むからじゃ。目標が遠すぎると何も見えんぞぃ」
「儂には搭乗型ゴーレムがベヘモスを倒す未来が、ちぃ~っとも想像出来んわぃ」
まぁ、普通はそうだろう。
でも――
「ドワーフの人達、知ってる? ベヘモスの肉って、最高に美味しいんだ」
実は俺達留学組の間では、実はアーキセルは初めからベヘモスの肉が目当てで、留学の交換条件としてベヘモスが出現するあの土地を欲しがったのではないだろうか? という憶測が出ているぐらいだ。
この憶測をラ・ラーリィに話しても、彼女は欠片も信じてはいない様だったけど。
「ふぁ?!」
「ま、まさか、お主等ベヘモスを食ろうた事があるんか?!」
「冗談じゃろ? あんなもん天災と一緒じゃ。人の力でどうこう出来るモンスターじゃないぞぃ」
「その話が本当なら、一体どうやってベヘモスの肉にあやかったのか、教えて欲しいのぅ」
「偶々老衰でくたばったベヘモスの死骸を直後に発見した、とかかの? そんな肉が美味いとは思えんが……」
「話によると、そのベヘモスの肉……なんと搭乗型ゴーレムで討伐したベヘモスの肉だそうだ」
「は~ん?」
「嘘をつくならもうちっとマシな嘘をつけぃ」
「儂等も搭乗型ゴーレムを知っておると言ったじゃろうが」
「搭乗型ゴーレムは確かに優秀な戦力じゃが、100体ぐらい揃えんと、ベヘモスに勝てるとは思えんの」
「それとも何か? ベヘモスの肉食いたさに、搭乗型ゴーレムを何百体も導入したっちゅうんか?」
「詳しくは教えてくれなかったけど、討伐に参加したネフィス家の私兵は4人だっていってたかな」
「4人? つまり4体?」
「ほれみてみぃ、絶対嘘じゃわい」
「そうじゃのぅ。せめて400体と言われれば納得も出来るがの。呆れもするが――」
「…………」
「ん? どうかしたかの?」
1人のドワーフが顎髭をしごきながら、なにやら考え込んでいる。
「……作業用……」
「ん?」
「儂等の国に貸し出されとるゴーレムじゃよ。確か、作業用と称しておったじゃろ?」
「つまり?」
「戦闘用ゴーレムが別にあるんじゃないのか?」
「い、いや、しかし、貸し出されとるゴーレムは普通に戦闘をこなすぞぃ?」
「だから……作業用ですら、それほどの性能って事なんじゃないのか?」
「―――ゴクリ。そ、そいじゃぁ、このルスモスも?」
ドワーフ達がバッと勢いよくこちらを見てくる。
「……その通り。と言いたいところだけど、ルスモスにそんな力はないかな。あくまで最終目標ってだけ。アーバン先生の造った搭乗型ゴーレムならベヘモスを狩れるって聞いちゃったんだ。自分達もそれを目標にしたいじゃないか」
「そ、そうか……いや、うん。そうじゃろうな」
「う~ん、しかし信じがたいのぉ」
「それ、本当にベヘモスの肉じゃったんか?」
「実際にベヘモスの肉を食べた事がある奴なんざいないわけじゃろ? お主等、揶揄われただけじゃないのか?」
「それが一番可能性が高そうじゃの」
「そうかもしれないな。でも、夢は見たっていいだろ? さて、いつまでもおしゃべりしていると、ルスモスの中でリ・マグが待ちくたびれてる。次は実際に木の的相手に魔法銃を放ってもらおう――」
ウェインの誰に言っても、ドワーフ達と同じような反応だったが、自分はあの時の肉は本当にベヘモスの肉だったと思っている。
モンスターは強くなればなるほどその肉が旨くなる傾向があると言う噂を裏付けるような、とんでもない美味しさだった。
あの味は忘れられない。
……じゅるり。
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