第173話 【西のダンジョン】 ー ウルド
「ウルドさん!?」
受付嬢が俺の顔を確認すると声を上げた。
その声に何人かの冒険者が反応してコチラをみる。
「ウルド!お前無事だったのかよ?!噂じゃあの男爵の所為で奴隷落ちしたって―――」
話しかけて来た昔馴染みの冒険者に右手の甲を見せる。
「……そうか、噂は本当だったんだな」
「今日はダンジョンに入るんでその報告にな」
「くそ!!あのクズ男爵!ウルドを使い潰す気か!!」
「いや。俺を買ったのは別の貴族だ」
「え?そうなのか?」
「ああ、あの男爵は俺を奴隷に落としたのは良いが俺の値段が思ったより高かったらしくてな。買いに来たが買えずに帰って行ったよ。笑えるだろ?」
「はは、そりゃ傑作だな。……でも、ダンジョンに挑まされるって事は結局ハズレの貴族に買われたんだろ?」
冒険者がダンジョンに挑むのは生きるためだ。生きるために必要な金をダンジョンで稼ぐ為に潜る。
比べて奴隷がダンジョンに潜るのは死にに行くことと同義のように扱われる。指定された階層に潜り、指定された物を持ち帰るまで戻る事は許されない。それが例えどれだけ無謀でも。
ただ―――
「どうだろうな。今のところ俺は大当たりを引いたと思ってるよ」
「……だったらなんでダンジョンに潜らされるんだよ。しかもそのガキや女どもも一緒にって事だろ?どう見ても最低の命令じゃないか」
少なくともその女の1人は俺やお前よりランクも実力も上だけどな。
「無茶はしなくて良いって言われてるし、ボウズがダンジョンに潜るのには反対なされてたよ」
「はぁ?」
「ウルド。今はアーバン様の奴隷として活動中なのを忘れないで。久しぶりにお友達に会えたのが嬉しいのは分かるけど用事を済ませるのが最優先よ」
イブが言う事も尤もなので俺は直ぐに話を切り上げる。
「そうだな悪い。お前も悪いな、またな」
「あ、ああ。ウルドが生きて戻れることを祈ってるよ」
話を切り上げた俺たちは先ほど俺の名前を叫んだ受付嬢の元に向かう。
「話は聞いていたわね?私たちは【西のダンジョン】に潜るつもり。はいコレ、ネフィス侯爵家から預かった命令書」
俺たちを代表してイブが手続きをしてくれるらしい。
王都の近くにあるダンジョンは2つ。西にある【西のダンジョン】と南東にある【死神の
名前に一貫性が無いのは、【死者の神室】の方にだけ名前が記されたプレートが存在しているからだ。誰が何時名付けたのかは判明していない。
「あ、あの……奴隷の方のみで行動されているのですか?監視役の方は外でしょうか?」
「……どうでも良いでしょ。それより早く確認を」
「か、確認致します」
そうだよな。普通奴隷だけで活動させるとは思わないよな。一応御者が外で待ってはいるが、監視にしちゃ普通のおっさんだったし。正直逃げ出そうと思えば逃げ切れるだろう。
……まぁ、逃げ出したところで行き先なんてどっかのスラムだ。どうせ碌な最後は迎えられないだろうけどな。
いや、待てよ?あのゴーレムを装備した状態で逃げ出した場合は?……選択肢は増えるだろうが、今の状況よりマシになるとは思えないな。というか、今の状況に逃げ出したいほどの不満なんてないな。
受付嬢が紋章入りの命令書を受け取りカウンターの下から分厚い本を取り出す。
パラパラと捲っている本を覗き込むと、1ページに付き2つの紋章とその家の事が書いてある様だった。あれで、紋章を照らし合わせるのだろう。
「確認しました。ではコチラの用紙に必要事項をご記入ください。読み書きが出来ない場合は代筆も可能です」
「問題無いわ」
用紙の内容を簡単に説明すると、ダンジョン内での如何なる事故や事件も本人の責任であり、冒険者ギルドの責任は問わない。という内容に同意する為のサイン。
それと、ダンジョンに潜る人数、名前……それから―――
「ねぇ、私たちにチーム名なんて無いのだけれど?ここは記入必須項目なのかしら?」
「はい。仮の物でも良いのでお書き下さい」
「だって。何にする?」
イブが手を止めてコチラに振り向いて俺たちに訪ねて来た。
「アタイは別に何でも……」
「流石にネフィス家やアーバン様の名前を勝手に使うのは不敬だよな?」
「ボクかっこいいのが良い!」
「格好良いのねぇ……例えば?」
「う~ん……う~ん……あ!前にアーバンさまが聞かせてくれたおはなしの魔道具戦隊ゴーレムンジャー!!アレがかっこいい!!」
「ああ、あの合体したり巨大化するゴーレムを作りたいとか仰てた時の?じゃあそれで」
「お、おいおい。そんなに適当で良いのか?ボウズには悪いがちょっと……」
「じゃあ他にアイデアがあるの?」
「い、いや、無いが……」
「じゃあ文句言わない。受付のこの娘も言ってたじゃない、仮のものでも良いって。正直名前なんかで時間を使いたくないのよ」
「そ、そうだな」
本当に魔道具戦隊ゴーレムンジャー(仮)って書きやがった。ダ、ダサすぎる。勘弁して欲しい。
「書けたわ」
「確認致します……はい、不備は御座いません。それでは皆様、どうぞお気を付けて」
受付嬢が深々と頭を下げた。
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