第174話 【西のダンジョン】 ー アノーレ

 最悪だ。彼女たちに会うなら【死神の神室】の方を推しとくんだった。


 【西のダンジョン】に到着し、馬車から降りてすぐに会いたくも無い3人と遭遇してしまったアタイは内心で愚痴た。


 「あれれ~。誰かと思ったら男に媚びるしか取り柄のないアノーレちゃんじゃな~い」


 「奴隷落ちしてもま~だ男に寄生して生きてんのぉ?本当恥知らずよねぇ」


 「今度の寄生先はそこの大男ってわけ?本当、男なら誰彼構わず手を出しちゃってはしたなぁい。こんなのが同じ冒険者だと思うと恥ずかしいわ。あ、今は奴隷なんだっけ?きゃはははは」


 冒険者チーム【深淵に咲く野ばら】それが彼女たちのチーム名だ。アタイは何故か彼女たちにトコトン嫌われている。嫌われるような事をした覚えは無いのだけど。


 「なんだ?このブスども」


 ちょ!ウルド?!

 確かに彼女たちの顔立ちはよろしくは無いけど、初対面でそれは流石に酷すぎない?


 「なっ?!私たちのドコがブスだって言うのよ!!」


 「そうよそうよ!これでも同年代の冒険者たちからは結構モテんのよウチら!」


 「アノーレみたいなクソビッチにしか相手にして貰えないアンタみたいな男には一生手が出せない高値の華でしょうが!!」


 ……イブさんが目の前にいるのに自分の容姿を自慢できるメンタルは称賛に値するかも。

 当のイブさんはエファンを連れて少し遠ざかった。

 エファンの情操教育的にあの3人はよろしくないと判断したのだろうか。


 「マジかよ。最近の男どもはこんなのにすら手を出すのか?いくら冒険者に女が少なすぎて女なら誰でもいいといったって限度があるだろ。これならゴブリンの牝でも相手にしてる方が3倍マシだろ」


 3倍ってリアルな数字がちょっと嫌だな。まさか本気で言っているわけではないだろうけど。


 「大方、ランクや歳の近いアノーレが自分たちよりモテるのが気に食わないとか、そんな下らねぇ理由でつっかかってるんだろうが、俺らはそんな下らねぇ事に付き合ってる暇はねぇんだよ。今俺らは侯爵家の命令でダンジョンに来てるんだ。それを邪魔するならテメェらは侯爵家に盾突く事になるが、それでもいいのか?」


 「ふ、ふん!体ばかり大きくても肝の小さい男ね!主の名前を出さなきゃ喧嘩すら出来ないなんて、アノーレにお似合いの恥ずかしいヤツ」


 「馬鹿か?俺の意志なんざ関係ないんだよ。そこにいる御者は正式なネフィス家の使用人だ。彼が報告すればお前等もめでたく奴隷落ちだと言ってんだよ。それが嫌ならとっとと失せろ」


 「……まぁ良いわ。奴隷としてダンジョンに挑まされてるって事はどうせ2人とも長くは生きられないだろうし、じゃあねアノーレ、さようなら」


 【深淵に咲く野ばら】はアタイたちより一足先にダンジョンの中へと入って行った。


 「……おい、まさか男どもにお前を襲わせたのってアイツらじゃねぇのか?」


 ウルドがとんでもない事を言いだした。


 「確かにアタイはあの3人に嫌われているけど、流石にそこまでは……」


 「そうか?まぁ調べようもねぇ事をぐたぐた言っててもしょうがねぇか。イブ、ボウズ、待たせたな」


 「終わった?」


 「ボクさっきのお姉さんたちキライ!アノーレお姉ちゃんアイツらにイジメられてるの?だったらボクがゴーレムを着てお仕置きしてきてあげる!」


 やめてやめて、大惨事の予感しかしないから。

 というか離れてたのに結局会話は聞かれちゃってたのかな?


 「き、気持ちだけ貰っておく。それより今はお仕事しないと、ね?」


 「そうだった!アーバンさまのお使いが最優先!」


 「そう最優先」


 馬車から装着型ゴーレムが入った次元収納の魔道具を持ち出して。それを持って4人でダンジョンの中へと入る。

 人目の少ない場所まで運んでそこで装着する予定だ。


 「ねぇねぇ、何でダンジョンの外で着ちゃ駄目なの?」


 エファンがアタイに質問してくるが、正直アタイも良く分かってない。

 そんなアタイに代わってイブが答えてくれるようだ。


 「面倒事は極力避けたいでしょ?質問攻めにされて時間を取られたり、強盗にゴーレムや命を狙われたり」


 「ゴーレムは魔力を登録していないと動かせないでしょ?ドロボーが持って行っても動かせないよ?」


 「それを信じなかったら?或いは説明する間もなく攻撃してくるかもしれないし、動かせなくても欲しがる奴も現れるかもしれない。とにかく、リスクを少しでも避けるためだと認識しておいてくれればいいわ」


 「はーい」


 良い返事だ。ちゃんと理解しているかは分からないが。


 「あ、そうだ写真撮っておかないと」


 直ぐに写真が撮れるようにカメラには紐が付けてあって首に掛けてある。

 ゴーレムを着ると細かい操作がしづらいのでゴーレムを着込む前に1階層の写真を数枚撮っておく。 写真を撮るたびにゴーレムを脱ぐと考えると地味に手間だな。いや前部分だけ開いた状態で撮ればそうでもないか。


 1階層は何の変哲もない岩肌だらけの場所だ。

 所々コケが生えている。


 「一階層の写真はアノーレに任せるわ。あまり撮り過ぎないようにね」


 イブに言われて、取りあえずこの場の写真は3枚だけにしておく。出て来た写真は胸のポケットに入れてボタンを閉じる。


 「さて、それじゃゴーレムを着たら先ずは肩慣らしに弱い魔物とでも戦ってみましょうか。1階層の雑魚とは言え、ゴーレムを着た状態での初めての実践よ。気を抜き過ぎないようにね」


 アタイはイブの言葉に頷いてからゴーレムを着込んだ。

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