第72話 朝、今度こそチラズとロボット談義に華を咲かせていると、

 朝、今度こそチラズとロボット談義に華を咲かせていると、朝食の準備が整ったとメイドに呼ばれて食堂に移動した。

 

 そこには鬼がいた。いや、こちらの世界に合わせるならば悪魔?むしろ魔王?がそこにいた。

 上座に座り、両腕を組んだその魔王は視線だけで人が殺せそうな勢いでコチラを睨んでいる。


 「アナタ、まさか仕事を放り出して帰ってきた訳じゃありませんわよね?」


 「勿論だ。嫌な予感がしてね、速攻で終わらせて馬を飛ばして帰ってきたんだ。お陰で馬を一頭潰す事になった。そうしたらどうだろう。娘たちにすり寄る悪い虫が我が屋敷に上がり込んでいるではないか」


 と、こちらを睨みつける魔王。

 ニーナがアナタと呼ぶことや、座っている場所や発言、そして使用人たちの態度から、彼がこの屋敷の主、ヌゼ=ネフィス侯爵その人で間違いないだろう。

 チラズもいるのに何故か睨みつけられるのは俺だけだ。


 「彼らはコーネリアの卒業祝いのプレゼントである魔道具を設置する為に態々足を運んでくださったのよ?当主がその様な態度では困ります」


 「プレゼント?それこそ女性の気を引きたい時の常とう手段ではないか。聞けばサリーにも色々と良くしてくれているようだな。なぁ、アーバン=グランシェルド?」


 うぐ。

 正直それは否定できない。美少女に喜んでもらえるなら男――少なくとも俺は張り切ってしまうものだ。まぁ、女性へのプレゼントに巨大ゴーレムを送るのはどうかと、ちょっと反省もしてる。後悔はしてない。

 サリーの事はおそらくぬいぐるみゴーレムの事を言っているのだろう。だってめっちゃ喜んでくれるし……

 チラズにも色々ゴーレム関係の物をプレゼントしているが、これは正直喜んで欲しいと言うよりも、同士が欲しいから布教している感じかな。


 「ご、御学友として、仲良くさせていただいています」


 とりあえず、当たり障りのない返答でお茶を濁そう。と思ったのだが―――


 「仲良くぅ?」


 あ、これ駄目だ。何を言っても地雷を踏んでしまう。


 俺が蛇に睨まれた蛙、いや魔王に睨まれたスライムになって冷汗を流していると、食堂の入り口の戸が開き、コーネリアとサリーが入ってきた。


 「父上?!お帰りは3日後では?!」


 「パパ!お帰りなさい!」


 サリーがヌゼに抱き着いて挨拶をすると、魔王は一瞬で消え去り、菩薩…いやアルカイックスマイルというにはデレデレ過ぎるので、どっちかと言うと恵比寿顔みたいな?兎に角、ヌゼの機嫌は一転した。


 だが、俺のピンチはまだ脱していない――

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