第56話 ダンジョンの入り口に向かいながら、

 ダンジョンの入り口に向かいながら、教師から現在の状況の説明を受けた。


 ダンジョンの入り口は爆発による土砂で塞がっており、人が通れるようになるまであと半日は掛かるだろうとの事。

 閉じ込められた生徒と教師は、戦闘しながら入り口に向かっているが、敵の数が多いのと1体1体の能力が高いため思うように進めていないのが現状らしい。

 一刻も早く救出に向かいたいところだが、入り口が開通するまではどうにも出来ない。先ずは土砂の撤去を手伝おう。


 と、思っていたのだが、実際にダンジョンの入り口に着いてみると、何か俺が思っていた作業と違った。

 土魔法を土砂に打ち込んでいるのだ。

 土魔法とは魔力を土や岩(正確にはソレに似た魔力の塊)に変化させて、その質量を対象にぶつける魔法だ。魔力は基本数秒で四散するので、土や岩っぽい物はその場に残る事はない。

 彼らはそんな土魔法で作った岩を土砂に向けて射出し、削れた土砂を人力で運んでいるのだ。


 何て非効率な。

 それが素直な俺の感想だった。


 「何であんな方法を?」


 俺がここまで案内してくれた教師に尋ねると彼は首を傾げた。


 「何故って、一般的な方法だと思うが。グランシェルド、君なら別の方法をとるのか?」


 「ゴーレム魔法で土砂をゴーレムにして動かせば一発なのでは?」


 「いや、普通に無理だろそれは。ゴーレム魔法はある程度の大きさの岩を人形にするだけだろう?しかも大きさもある程度均一じゃないとまともに歩けない筈だ。土砂には大小様々な岩や土、砂が混じっていてとてもでは無いが真面なゴーレムなんぞ作れんぞ。それに、そもそもゴーレム魔法何ていうニッチな魔法を習得している者がいるかどうか」


 ニッチ……ニッチなのかぁ……便利なのになぁ、ゴーレム魔法。


 というか、もしかしてゴーレム魔法の研究って、俺が7歳の頃かあら何の進歩もしてないのか?ニッチ過ぎて誰も研究してないの?


 「自分なら出来ると思いますよ?試してみても?」


 「幾ら君でもそんなこと……いや、もしかしたら本当に?………分かった、一時的に作業している教師と生徒たちに下がるよう伝えてこよう」


 教師がそう言って作業をしている人たちの元へ駆けていく。

 しばらくすると生徒たちは渋々といった感じでその場を離れ始めた。何人かの生徒はコチラを睨んでいる。

 いや、どんな伝え方をしたんだよ教師。


 ま、まあ良い。ちゃっちゃと終わらせよう。


 先ずは大きな岩を軸に人型のゴーレムの素体を作る。大きさは高さ5メートルほどだ。


 「やっぱりゴーレム魔法何てその程度で……」

 「い、いや。滅茶苦茶デカいぞ、あのゴーレム」


 何か言っている生徒がいるが気にしない。

 続けて素体のゴーレムに小さめの岩で隙間を埋めるようにはめ込んでいく。最後に更に細かい砂利を隙間に詰め込んで、それを重ねて完成だ。出来上がったゴーレムは邪魔にならない場所に移動させそこで魔法を解除する。

 その工程を3度繰り返すと、ある程度の大きさの穴が開通した。

 1発なのではとか言ったのは聞かなかった事にしてくれ。

 人が通るには十分だが、足元にはまだかなりの量の砂利が残っていて歩きにくい。本来ならもう少し砂利をどかしたいが、魔道具タイプのゴーレムを動かすのと、ゴーレムを作りだすゴーレム魔法では消費する魔力が段違いなのだ。正直これからダンジョンに突入することを考えるとこれ以上の魔力消費は抑えたい。

 後は地上に残るだろう先輩方に手作業で綺麗にして貰おう。


 「さ、コレで中に入れます。急ぎましょう」


 「「「…………」」」


 何故か誰も何も言ってくれなかった。

 ただポカンと口を開いてこちらを見ている。

 ノリが悪いぞ、教師&先輩諸君。

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