第55話 「うわぁああああああああああ!!」
「うわぁああああああああああ!!」
俺の後ろでチラズが情けない声を上げている。
まぁ、気持ちは分からなくもない。
これだけのスピードで移動する機会はこの世界ではそう無いだろう。しかも空を飛んでいるのだ。正直俺も結構怖い。
まるで前世の世界にあったジェットコースターみたいな。
ん?ジェットコースターに乗った記憶が無いな。まさか友達がいなくて乗る機会がなかったのか?いや、そんなまさかね。記憶にないだけだよね、友達いたよね?
途中魔力と体力温存の為操縦をチラズに変わって貰う。
スピードは落ちるが結果的にこちらの方が早く着くはずだ。
「このまま真っすぐ飛んで。悪いけど俺はちょっと仮眠するね」
「え?ええ?!」
高速で移動する乗り物の上で体を剥き出しの状態、背中にはチラズの巨大なリュック型次元収納の魔道具。この状態で状態で寝れるというのだからそれは驚かれるだろう。アーバン君の心臓に生えている毛は剛毛なのだ。
「ア、アーバン先輩。目的地が見えてきましたよ」
と、チラズに起こされた。
どうやら仮眠どころかがっつり眠ってしまったらしい。
剛毛どころかオリハルコン製の毛でも生えているのかもしれない。
「現地に着いたらチラズ君はちょっと休んでて。その間俺は状況を確認するから」
「わ、わかりました」
俺と違ってチラズは一睡も出来ていない。流石にこのままダンジョンに挑ませるのは無謀だろう。
町の上空を飛行し、ダンジョンに一直線に向かう。
ダンジョンの前に着くとそこには人だかりが出来ている。制服を着ている者が殆どだ、脱出できた生徒たちだろうか。
一団の近くに着陸した俺たちの元に男が駆け寄ってきた。
「グランシェルド!?なんで君がここに?!」
声を掛けて来たのは見知らぬおっさん。俺の事を知っているという事は学園の人か?状況からして教師だろうか?
「自分を知っているんですか?」
「王立学園の教師で君の事を知らない人間などいないさ」
やっぱり教師だったようだ。
それにしても王立学園の教師なら全員俺を知っている?何故だ?アーバン君は品行方正で一度も生徒指導室に呼ばれたこともない目立たない生徒なのに。
「それで、グランシェルド。もう一度尋ねるが何故ここに?」
「念話で救援を要請されまして。自分にもできる事が無いかと飛んできた次第です」
本当は直接の念話のやり取りはしていない。
サリーが言っていたように中は大混乱の様で碌につながらないのだ。
「飛んできたって……」
教師がジェットパックの方を見る。ジェットパックの傍らには、それを背もたれに休憩しているチラズの姿が見受けられる。
「一生徒の助力など不要かもしれませんが。自分にも出来ることが有れば手伝わせて下さい」
「いや、君ならば助かる。是非手を貸してくれ」
「わかりました。まずは状況を教えて貰えますか?」
「わかった、着いて来てくれ」
一旦チラズはその場に置いて行く。教師から聞いた内容は後で俺から教えれば良いだろう。今、彼にはなにより休息が必要だ。
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