第54話 「アーバンくん!!お願い、お姉ちゃんを助けて!!」
「アーバンくん!!お願い、お姉ちゃんを助けて!!」
屋上の第2部室の前のスペースでチラズとゴーレムで遊んでいると、突如ネッシーっぽいぬいぐるみゴーレムのソラに乗ったサリーが、屋上のフェンスの上を飛び越えて来たかと思ったら、そんな事を叫んだ。
うーん、あのゴーレムの安全面ももうちょっと考えないと、あの高さから落ちたら普通に大怪我だ。おっと、今はそんな事を考えている場合じゃなさそうだ。
「えっと、どうしたんですが?」
「【試しの遺跡】に本来出るはずのない強力なモンスターが大量に出現したって!今、念話が錯綜しすぎててお姉ちゃんと上手く繋がらないの!」
思ったより大ごとだった。
しかし、一介の学生である俺に出来る事などあるだろうか。
あったとして本職の騎士たちに任せた方が良いのでは?
そんな事を考えていると、今にも泣きだしそうなサリーの顔が目に入った。
……うん、俺に出来ることもきっとある筈だ。出来るだけの事をやろう。
「分かった、俺に何が出来るか分からないけど、出来る限り頑張ってみるよ」
「ア、アーバンくん!ありがとう!!」
先ずは移動手段について考えよう。確か【試しの遺跡】がある町まで馬車で2日。普通に移動してたのでは間に合わない可能性が高い。
となると―――
俺はチラズのゴーレムであるドラゴレイムをチラリと見る。その背中にはパージ可能な大きなジェットパック。人2人ぐらいなら乗せて運べそうだ。
「チラズ君。悪いけどドラゴレイムのジェットパック貸してくれる?」
「え、うん。良いけど、どうするの?」
チラズの許可を得て、ドラゴレイムのジェットパックを外し、ゴーレム魔法で人が乗れるように改造する。とはいえ突貫なので巨大騎士ゴーレムのコックピットの作りをそのまま再現しただけの、足と腰を固定できるだけの簡素なものだ。うーん、心許ない。気休め程度にサポーターとヘルメットも作っておこう。
「よし、これなら馬車より数倍速く移動できるはずだ。後は……」
巨大騎士ゴーレムも持っていきたいが、組み立てに少し時間が掛かる上に、そもそも巨体なのでダンジョンで上手く機能するか分からない。今回は置いて行くことにしよう。代わりに小型ゴーレムたちを持ち運びできる次元収納の魔道具に入れていく。普通に次元収納の魔法も使えるのだが、こちらの方が魔力消費が格段に少なくて済むからだ。
元々タダの玩具として作ったゴーレムたちだが、並みの魔物なら戦力になってくれるだろう……多分。
後は……
「あ、俺【試しの遺跡】の場所知らないや。サリー先輩、申し訳ないですけど地図を持ってきて貰えますか?」
「わ、分かった!!」
サリーがソラに乗って屋上から降りていくのを確認し、俺はジェットパックに乗り込んだ。
「さて、俺は今すぐに【試しの遺跡】に向かうけど、チラズ君はどうする?」
「え?え?あの地図は?」
「俺の頭の中にあるよ」
前に【試しの遺跡】について調べた時、町の場所も調べた。
つい先日の事だ、流石にまだ覚えている。
「サリーはゴーレムの操作は一流だけど戦えないだろ?だから連れて行けない。でもチラズ君はもう大分ゴーレムの操縦も上手くなっているし、戦力としてみれる。でもこれから向かう場所は危険な場所だ。同行するかは君の判断に任せるよ」
俺が入部して3年。サリーは一度もゴーレムで戦ってくれなかった。そんな彼女にいきなり実践をさせるわけにはいかない。
「ボ、ボクは……」
チラズは少し迷ったあと、俺がチラズ用に作った次元収納の巨大リュックにドラゴレイムをねじ込んだ。ちなみに、彼の背丈ぐらいある大きなリュックだが、ドラゴレイムを入れても重量は変わらないので精々2kg程度だ。
「ボクも行くよ!ボクだって戦える!!」
「良し、じゃあ後ろに乗って!」
チラズがジェットパックに乗ったのを確認して、俺はジェットパックに魔力を流した。
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