第53話 第4王子視点(3)

 【試しの遺跡】の入り口何者かに爆破され、さらに上級のモンスターが大量に出現した。念話によるそんな知らせが届き王城は蜂の巣をつついたような大騒ぎだ。


 「だ、第4王子!!」


 俺は軟禁されていた部屋を出て態と人目についた。

 作戦開始だ。


 「話は聞かせて貰った!!軍を編制するのにも時間が掛かるだろう!我は一部の精鋭を引きつれて先行する!!」


 「ば、馬鹿な?!王子自らですと?!しかも御身は今謹慎中の身ですぞ?!」


 「我が学友の危機なのだぞ?!そんな事は言っていられん!罰ならば戻ってから受よう!!」


 「お、王子!!」


 あいつ、同士とやらが扮したサクラじゃないのか?と思ってしまうほど想定した通りのやり取りを交わした後、俺は城門前に用意されていた軍用魔馬に跨った。【試しの遺跡】まで馬車ならば2日かかるがコイツを飛ばせば1日と掛からないだろう。


 「待っていてくれ友たちよ!今助けに行くぞ!!」


 態と周りの人間に聞こえるように叫び、馬の横腹を蹴った。


 まぁ、学友と言っても学年が違うので、実際に顔を知っているのは生徒会のメンバーだった奴ぐらいだがな。あいつら、俺が軟禁されてから1回も面会に来なかったな。

 いっそ必要な犠牲者とやらに入っていれば良いのだ。



 


 魔馬を走らせる事丸一、目的の【試しの遺跡】のある村を目前に少し休憩をとることになった。流石に休憩もなくダンジョンに挑むのはしんどいからな。


 そんな時、現地に潜伏しているという同士とやらが念話をしてきたらしい。


 「王子、どうやら想定外の事が起きているようです」


 「想定外の事?何だ?」


 「どうやら魔物の扉で召喚したモンスター達が次々にやられている様です」


 「何?今回の作戦に使うのはBランクのモンスターだと聞いているぞ?学生如きがどうこう出来るとは思えんが……教師陣が思いのほか優秀だったか?」


 「いえ。確かにあの学園の教師は優秀ではありますが、それでも1人で1体か2体を相手するのがやっとでしょう。活躍しているのはコーネリア=ネフィスという生徒だそうです」


 「コーネリア=ネフィス……そういえば、化け物みたいな腕前の女生徒がいると噂が有ったな。入学して直ぐ噂を聞かなくなったから只の噂だと思っていたが、そいつの名前が確かコーネリア=ネフィスだったような気がする」


 「はい。第3大隊に入隊が内定している程の腕前ですが、まさかここまでとは」


 「それで、まさかここまで来て作戦は失敗ですなどという気か?」


 「いえ。ダンジョン内に設置している他の扉も起動させるようです。中にはAランクのモンスターも数体ですが紛れています。流石のネフィスも対処は難しいでしょう」


 「おい、そんな中に俺を連れて行く気か?!」


 冗談じゃない、そうでなくても危険な賭けではあるのだ、リスクが高くなりすぎる。


 「王子は少しだけここで待機していて下さい。コーネリアを排除出来しだいAランクのモンスターは封印致します。その後作戦通りに」


 「……分かった。それはそうと魔物の扉とやらは遠隔でも操作出来る物なのか?ダンジョンの入り口はまだ土砂で塞がっているのだろう?」


 「なに、第4王子のお役に立てるなら10日程ダンジョンで寝泊まりするぐらい何ともありません。むしろ名誉な事です」


 「そうか。中に潜伏させていたのか。中々の忠義じゃないか、気に入った」


 「そのお言葉だけで彼らも報われるでしょう」

 

 「だろうな!はっはっは!!」


 その忠義に免じて、暫くここで待機しておいてやる事にした。

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