第51話 第4王子視点(1)
時は少しだけ遡る。
コーネリアたち5年生が遠征に出発する数日前の事である。
「ありえない!!何故たかだか伯爵家の子息に生徒会入りを強要したぐらいで俺が軟禁されなければならんのだ!!」
むしゃくしゃして近くに有った花瓶を薙ぎ払う。
地面に叩きつけられて割れたソレを、直ぐにメイドが来て片付けていく。
そんなメイドの近くに見知った顔の爺さんがいた。
「全くですな、王子」
謹慎中の家庭教師として俺につけられたこの爺、学園に入る前にも俺に宛がわれていた。
王子の家庭教師は特別で、名乗る事を許されない。そのため俺はいつも家庭教師の爺さんと呼んでいた。
「父上は頭がおかしくなられたのか?!第4王子である俺よりも、伯爵家の子息の意見を重視するなどと!!」
「あり得ない事でございます」
「そうだとも!!ありえん!!これは間違った、不当な処罰だ!!断固改善を要求する!!」
「しかし、王子が軟禁されてからずっとその要求は却下されております。また、このまま反省の色が見られない場合、本当に王族から外すしかないとの意見も出ております」
「な、なんだと?!なんだそれは?!どいつもこいつも馬鹿なのか?!伯爵家のガキに媚びて王族を廃嫡するだと?!そんな事をすれば王家の威信にかかわるではないか!!貴族共が調子にのり国が傾く原因になるぞ!!何故そんな簡単な事すらわからん!!」
「然り然り。流石は第4王子。良く理解しておられますな。このまま現王が政権を握れば、この国は衰退していく一方かも知れませんな」
「衰退で済めばマシだ。最悪滅ぶことになるぞ」
「おぉ…恐ろしいことです」
「何とかして父上の目を覚まさせなければ」
「おや?そんなぬるい考えでよろしいのですか?」
「何?」
「これまで第4王子がどれだけ今回の沙汰の不当性を説いても理解出来ない現王に、これ以上玉座は重荷なのでは?そろそろ御父上を楽にして差し上げるべきなのでは?」
「お、お前。まさか、この俺に父上を殺せと言っているのではないだろうな?」
「まさかまさか。そのような恐ろしい事、考えてもおりません。ただ、冠だけ頂けば宜しいのでは?」
「つまり、父上には引退して頂くわけか」
「はい、生前退位の前例は御座いますし、このまま見過ごせば国が亡ぶ可能性もあるのでしょう?」
「しかしクーデターなど上手くいく筈もなかろう」
「もちろん。それこそ暗殺でもしない限りは現王を今すぐ玉座から下ろすことは出来ないでしょうし、出来たとしても、通常通り第1王子がその席に座る事になるでしょうな」
「第1王子も父よりの考えだからな、それでは何の意味も無い」
「それならば、誰もが認める実績と力を第4王子が手にすれば良いのです。さすれば今回の貴方の軟禁にかかわった者たちが如何に愚か者だったか、多くの者が理解するでしょう。そのタイミングで現王には退位して頂きましょう」
「簡単に言ってくれるな……その話しぶりからして、何かアテがあるのだろうな?」
「勿論でございます」
「聞かせろ」
「第4王子は【試しの遺跡】というダンジョンをご存じですかな?」
爺さんが怪し気に笑った―――
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