第50話 コーネリア視点(3)

 いつもより多くウインドブレイドに魔力を流す。

 このウインドブレイド、魔力を流せば流すだけ切れ味が増すのだが、今のところ限界まで魔力を流せたのはアーバン君だけだ。といっても試したのは私とアーバン君、それとサリーとチラズ君の部員4名だけだが。

 それでも、限界までに至らない私の魔力でも、普段は切れ味が良すぎるので威力を抑えて使っている。 ちなみに普段流す魔力はおよそ1割程度だ。


 しかし、今回の相手はそんな事を言っていられる相手ではない。

 相手はBランク指定のモンスター。敵の数を考えると全力で魔力を流し続けるわけにはいかないが、余力を残して戦える相手でも無いだろう。

 先ずは6割。魔力をウインドブレイドに流し込んだ。

 この6割という数字は、別に私の全魔力の6割という意味ではない。私が一度に放出出来る魔力量の6割という意味だ。これなら20回繰り返しても魔力が枯渇する事はないだろうというギリギリのラインだ。これでダメなら次は8割の魔力を流し込む。それでもダメなら10割だが……そこまでやって駄目なら死ぬだけだが、仮にそれで倒せても直ぐに魔力切れだ。



 魔力を流しながらシャドーデーモンに向かって走る私に、シャドーデーモンが反射的に攻撃をしてくる。

 最前の1匹が腕を前に突き出すと、その腕が勢いよく伸びた。その先端の爪は鋭利に尖っていて、まるで幾らでも自在に伸ばせる槍のようだ。


 (速い!!しかし―――)


 アーバン君の剣ほどではない。


 私は咄嗟に横に避け、直ぐに後悔した。


 (しまった!後ろには先生やクラスメイトたちが!)


 戦う覚悟を決めた教師陣ならともかく、後ろの生徒たちが咄嗟に避けるのは不可能だろう。


 「チィ!」


 私はウインドブレイドでシャドーデーモンの伸びた腕を切り上げた。

 軌道がそれて天井の方に弾ければ、少しでも被害が抑えられるかもしれない。そう考えて放った私の1撃はシャドーデーモンの腕をすり抜ける。


 「な―――っ?!」


 斬撃が効きにくいどころではない。すり抜けるのでは戦い様がないではないか。

 そう考えたが実際は違った。


 ボトっ


 私が切り上げた場所から先、シャドーデーモンの伸びた腕が地面に落ちたのだ。


 「……は?」


 もしかして、斬ったのか?私が。

 まるで斬った感触など無かったのだが―――


 「グギャアアアアアア!!」


 シャドーデーモンが痛みからか、怒りからか咆哮を上げた。


 勝てる。


 私がそう確信した瞬間私の近くで炎の爆発が起こった。

 見ると別のシャドーデーモンが壁に這わせるような動きで腕を伸ばし、そこから直角に曲げて私を狙っていたようだ。

 その腕を教師が魔法で防いでくれたようだ。耐火の魔道具のおかげか熱さは感じなかった。


 「油断するな!敵は多いぞ」


 「はい!」


 (私はまだまだだな。相手は格上。油断すれば即死)


 呼吸を整え、覚悟を決め直した。


 

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