第49話 コーネリア視点(2)

「ダンジョンの入り口が爆発によって塞がれたようです。間違いなく人為的な爆発だったようですが、犯人は見つかっていないそうです」


 念話の魔法で地上で待機している別の教師に状況を確認した教師が、もう一人の引率の教師と私たち生徒に聞こえるように説明してくれた。


 「土魔法で土砂を取り除いているようですが、かなり大規模な爆発だったらしく、通れるようになるのに1日と半日は掛かりそうだとのことです」


 「う~む……犯人の目的はなんだと思いますか?」


 「十中八九、生徒たちの命かと……」


 「ひぃ!」


 教師たちの会話を聞いた生徒の誰かが、怯えた声を漏らした。


 (緊急事態を模した訓練だろうか?)


 私がそんな事を考えていた時、ダンジョンの奥の方からぬるりとソレは姿を現した。


 黒い人型の、影の様なモンスター。頭部にはテラテラとした赤黒い角、同じ質感の長い爪。怪しく光る瞳。全長2メートルぐらいある。そんなモンスターが全部で10体。


 「アレは、シャドーデーモン!?馬鹿な、こんな初級ダンジョンになんでシャドーデーモンが?!」


 教師の言葉でモンスターの正体を知ることが出来た。


 シャドーデーモン。

 確かBランク指定のモンスターだ。このBランク指定というのは単体の脅威度を表す指針で、用は一体倒すのにBランクの冒険者で構成されたパーティ1チームが必要になる事になる。

 それが10体。


 「お前たちは我々の後ろに――」


 引率の教師2人が私たち生徒を庇う様に、私たちの前に立つ。

 そんな彼らの顔には大量の冷汗、手は震えている。

 恐らく死を覚悟しているのだろう。

 それでも最後まで生徒を守ろうと言う彼らを、私は尊敬する。

 そして、私もそうありたいと願う。

 私はありったけの勇気を振り絞り前にでる。


 「王国騎士団、第3大隊内定騎士!コーネリア=ネフィス!!加勢いたします!!」


 (はは、内定では決まりきらないな)


 「気持ちは嬉しいが、ネフィス。アイツらに斬撃は殆ど効かないぞ?」


 「私の剣は魔法剣です。風の魔法を纏って戦います。おそらくシャドーデーモンにも多少のダメージは与えられるかと」


 「ほう!魔法剣か。そんな希少な物をたかが演習で持たせるとは、侯爵はよほど娘が可愛いようだな」


 「父が私や妹に甘いのは認めますが、これは友人からプレゼントされたものでして」


 「なに?魔法剣を貰った?滅多にドロップしない激レアアイテムだと聞いているが……まぁ良い。そういう事なら当てにさせて貰おう」


 「ええ、せめて1体だけでも倒して見せます。先生方は火魔法または風魔法で援護射撃をお願いします」


 私は身体強化の魔法を使い、教師たちより更に1歩前にでる。


 「何故、火と風に限定するんだ?」


 「私は耐火と耐風の魔道具を身につけています。ですから私の近くの敵に対しても誤射を気にせず放ってください。流石に直撃は困りますが掠める程度ならば問題無い筈です」


 私は腕に嵌めたブレスレットをチラリと教師たちに見せる。

 実際に効果を確かめた事の無い魔道具に命を預ける。おそらく多くの貴族が愚かだと笑うだろう。しかし―――


 (アーバン君。信じているぞ)


 「そんな物まで持っているのか。了解した。援護魔法は火と風に限定する。前衛はは任せたぞ、ネフィス」


 「はい。では―――コーネリア=ネフィス。参る!!≪身体強化≫!!」


 身体強化の魔法を使用してから、魔力をウインドブレイドに流し、私は全力で地面を蹴った。

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