第38話 放課後、俺はゴーレムに持たせる剣に風魔法を纏わせてみていた。

 放課後、俺はゴーレムに持たせる剣に風魔法を纏わせてみていた。


 ケイトにせがまれて魔法を放った時に思いついたのだが、風を纏った剣ってカッコ良くない?と思って早速試しに作ってみる事にしたのだ。


 剣に直接魔法陣を描き込み、剣自体を魔道具化している。謂わば魔法剣と言えるだろう。ただし50cm級のゴーレムに持たせるものなので長さは20cmも無い。

 見た目完全に玩具のその剣をゴーレムに持たせて試し斬りしてみる。ちなみに魔法剣なんて格好いい言い方をしたがこの剣に刃はついていない。只の木剣だ。


 試し斬りに使うのはゴーレムの素材用に持ち込んでいた木材。横50cm、奥行き20cmのその木材を立てて、それに向かって俺の操作するゴーレムが魔法剣で斬りかかる。

 結果は見事切断。断面を見ると多少汚いが、折ったのでは無く切ったと言って問題無いだろう。

 只の木剣でこれなのだから刃の付いた鉄の剣ならば切れ味は恐ろしい事になるだろう。将来作る予定の俺の愛機に持たせても良いかもしれない。


 中々満足のいく結果に満足していると、ふと視線を感じた。

 視線を感じた方を向くとそこにいたのはコーネリアだった。

 それはもう熱視線を飛ばしてきている。ガン見である。正直怖い。


 「な、何ですか?」


 問いかけるとコーネリアが鼻息荒くこちらに近づいてくる。

 そしてガシリと両手で俺の手を取った。こわいこわいこわい。

 美女に手を握られて、嬉しいより怖いという感情が先立つ日が来るとは思って無かった。


 「頼むアーバン君!!私にもその剣を作ってくれないだろうか!!一生のお願いだ」


 一生のお願いをこんな所で使うんじゃありません。


 「えっと、それはコーネリア先輩の騎士ゴーレムにも持たせたいって事ですか?」


 俺の問いにコーネリアがブンブンと首を横に振る。


 「違う!私用の剣を作って欲しい!!」


 つまりゴーレムに持たせるようではなく自分が振るうように欲しいらしい。

 まさか剣術の授業で使うつもりだろうか?けが人がでますよ?


 「先輩の木剣を魔道具化すれば良いんですか?」


 と問うと、またしてもコーネリアは首を横に振った。


 「木剣では無く実戦用のロングソードを魔道具、いや魔法剣にして欲しいのだ!」


 益々怖いんだが。殺したい強敵でもいるんだろうか?


 「用途をお伺いしても?」


 「用途――?」


 「ん?」


 用途を尋ねられてキョトンとするコーネリアに俺も首を傾げる。え?あんなに熱烈に欲しがってたのに用途が決まってる訳じゃないのか?


 「単純に欲しいだけだが?」


 ただのコレクション用かい!

 

 と、思ったが前世で限定のプラモを転売ヤーから10万で買った事のある俺が言えた義理では無い。……反省はしている。

 というか前世の記憶は朧気なのに変な事だけ鮮明に覚えているのはなんでなんだ?


 「頼む!何でもするから!!」


 な、なんでも、だと?!

 ここで再び登場する在りし日のスケベアーバン君。

 ……ゴクリ。


 いや、落ち着け俺。もしもここでエッチな要求でもしてみろ。今まで築き上げて来た良好な人間関係が死ぬぞ。


 ……

 …………

 ………………


 「お、俺とコーネリア先輩の仲じゃないですか。特許の時にお世話になりましたし、そのお礼にプレゼントさせて貰いますよ。もちろんタダで」


 コーネリアの表情がパッと明るくなる。


 違うぞ、根性なしとかじゃ無いぞ。

 人として当たり前の行動だぞ、本当だぞ。


 トホホ。

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