第30話 ホームルームの前の時間に、
ホームルームの前の時間に、俺は教室の前の廊下で生徒会の腕章を付けた一団に囲まれていた。
「さて、アーバン=グランシェルド。改めて自己紹介しよう。私は生徒会長を務めている第4王子である」
「エドガー=グランシェルド伯爵の子、アーバン=グランシェルドです。お目通り願いまして光栄です」
適当に挨拶をすると、第4王子はまんざらでもなさそうな表情をみせる。
「本日は私にお話があるとか。どのようなお話でしょうか?」
「うむ、その前に聞くが、貴様先日生徒会入りの話を断ったという話は本当か?」
第4王子は表情を一変させ睨み付けて来た。
「はい。そちらの侯爵家の血筋の方にはお伝えしましたが、もう一度改めてお話させていただきます。そちらの侯爵家の血筋の方の仰るとおり、私は伯爵家の者。歴史と名誉ある生徒会に名を連ねるなど烏滸がましいというもの。私には過ぎた栄誉なので辞させて頂きたいと思います」
あの時の返事の内容を大まかに伝える。王子の横でイケメン風金髪優男が眉をピクつかせている。
「………セムナント。一応確認するが、貴様はどんな誘い方でグランシェルドを生徒会に誘ったんだ?」
「い、いえ。私は普通に、生徒会に入る名誉をくれてやると、そう言っただけでして」
セムナントって名前だったのか。これ名前だよな。家名じゃないよな?
「と、本人は言っているが間違はないか?」
「ええ、付け足すならば伯爵家の者には生徒会は相応しくない、的な事も言われた気がしますね」
「わ、私は伯爵家の者ならばギリギリ許されるだろうと言ったのだ!」
「ああ、そうでした。だから雑用をする栄誉を下さるという話でしたね」
「そうだ!伯爵家の者が生徒会に加入できるのだ。光栄に思って当たり前だろう」
「……と、こんな感じのやり取りをさせていただきました」
まずいと思ったのかセムナントが怯えながら第4王子の方を恐る恐る確認している。
「それでグランシェルドは臍を曲げてその様な断り方をしたのか。ふん、ガキだな」
自分を擁護するかの発言に今度は一気に満面の笑みになるセムナント。うん、百面相は見ていてちょっとおもしろい。
「良いか?セムナントの言っている事は全て当然のことだ。本来ならば伯爵など生徒会に入るに値しない。それを貴様の成績に免じて特別に入れてやろうというのだ。それを断るとは何様のつもりだ」
伯爵では無くその子息な。
「自分には過ぎた栄誉ですので」
「チッ!本当にガキだな」
第4王子は分かりやすく不機嫌になる。そっちも十分にガキだと思うぞ第4王子君。あと、臍を曲げたかどうか置いておいて、面倒だし
「では言い方を変える。これは命令だ!アーバン=グランシェルド。貴様は生徒会に入れ」
「命令、でございますか?それは第4王子としての命令という事でございますか?」
「他に何がある?」
「学園では、生徒たちは家柄に関係無く互いに尊敬し合うべしという校則があるのはご存じでしょうか?」
「はん。貴様本当に成績が優秀なのか?あんな見え見えの建前を信じるなど。良いか?学園とは将来の為に人脈を作る場なのだ。それを家柄を無視して行えるわけがなかろう」
「では、学園の運営を国が行っているという事もご存じですか?」
「おい貴様。俺を馬鹿にしているのか?俺は第4王子だぞ、知らない訳がなかろう」
うん、王子かどうかは関係ないよね?王立学園って名乗ってるし。
「つまり、第4王子、御身自ら国の決めた校則を破るというわけですね?」
「はっ、それで脅しているつもりか?たかが学園でのルールを1つ破ったからと言って何だというのだ。俺はこの国の王子だぞ!貴様らは黙って俺に従っていれば良いのだ!!」
「左様で御座いますか。畏まりました、謹んで雑用を引き受けさせていただきます」
「ふん、やっと分かったか。物分かりが悪い奴め。本当に生徒会に入れる価値があるのか疑わしくなってきたぞ。まぁ余りに役に立たなければ切り捨てるだけだ」
そう言って第4王子は勝手に納得して去って行った。
やれやれ、またカミーユにお使いを頼まないと。余計な仕事を増やして申し訳ない。
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