第28話 「おお~」

 「おお~」


 案内された工房には見たことも無い魔道具や、魔道具の素体となりえる鉱石や魔物の素材などが大量にあった。おそらくどれもかなり高価な物だろう。


 「アーバンよ、大丈夫なのか?私は魔道具には詳しくないが国お抱えの魔道具師が作れないような物を2時間で作るなど」


 「大丈夫ですよ、城の工房だけあって立派な施設もありますし、魔力液を調節して魔法陣を描くだけなので。正直2時間は万が一の時を考えて結構長めに申告しています」


 「そ、そうなのか?まぁ、それなら良いのだが……」


 そう言いつつも父は心配そうだ。


 「アーバン殿。お待たせしてしました。準備が整いましたのでさっそくお願いします。それと魔道具の制作過程を魔道具師たちにも見せたいのですが、構いませんか?」


 コーネリアの予想では別日になる予定だった魔道具師たちへの説明も同時になるらしい、正直手間が省けるのでむしろありがたい。


 「勿論です。部外者が工房を使わせて頂く訳ですから」


 むしろどうせ見たって分からないだろう貴族たちが見学する方が無駄に感じる。もちろん口にはしないが。


 「では、始めますね」


 先ずは魔法陣を描くための魔力液に自分の魔力を流し魔力を調節する。別に他人の魔力でも描けなくも無いのだが、ひっかかりのようなモノを感じて書きにくいのだ。

 3分程かけて魔力液に魔力を浸透させ、次に魔道具になる素体に魔力液で魔法陣を描いていく。今回用意した素体は木箱。魔法陣はその木箱の底の内側に書いて行く。見学している魔道具師にはかなり見えにくい場所なのが申し訳ない。が、ここが最も効率よく魔道具化出来るので仕方ない。

 大体1時間ほどで魔法陣が完成した。最後に動作チェックの為に魔力を流し込む。

 ―――うん、問題なく作動したようだ。


 「完成しました」


 貴族たちはざわつき、魔道具師たちはどよめいている。


 「試してみても?」


 「もちろんです」


 魔道具師の一人が魔道具に魔力を流す。すると木箱の内側に次元収納の魔法が発動した。黒い渦の様なその空間に、魔道具師が近くに有った適当な魔道具を放り込む、それから少しだけ待って、それを取り出した。


 「間違いありません。次元収納の魔道具として作動しております」


 「なんと…」


 「本当に…」


 「僅か1時間で…」


 魔道具師たちが様々に驚いている横で貴族たちは一様に悔しそうだ。

 先ほどのロング口髭ダンディなど、口髭を咥えて歯ぎしりしている。

 いや、どんだけ使用料払いたくないんだよ。

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