第26話 「すまないアーバン君」
「すまないアーバン君」
いつもの様に部室でゴーレムをいじっていると、珍しく遅れて来たコーネリアが部室に入ってくるなり俺に頭を下げた。
「え?何ですか急に」
「次元収納の特許の件なのだが―――」
コーネリアにしては珍しく歯切れが悪い。
「もしかして申請が通りませんでしたか?」
「いや……特許は取れたよ。ただ、色々根回しはしたのだが、結局大ごとになってしまってね……」
大ごと?もしかして誤作動でも起こして大爆発でもしたのかな?そんな要素は無かった筈だけど。突貫ではあったからな。
「大ごとと言うと?」
「アーバンくん、近日中に登城命令がでるみたいだよ?」
コーネリアの後ろからひょっこりと顔をだしたサリーがとんでもない事を言いだした。
「登城命令?何故?」
「それがね、キミが作った次元収納の魔道具、その魔法陣が複雑すぎて魔道具師たちが再現出来ないらしいんだ」
「え?」
そんなはずはない。確かに突貫だったが故に無駄も多いし、簡略化の余地は大いに残っていたが、魔法陣の設計図を渡しているのだ。そのまま転用すればよい。
「特許の申請に必要だからと、魔道具の実物と魔法陣の設計図も渡しましたよね?」
「ああ。サンプルとして渡した魔道具は問題なく作動している。問題は設計図の方だ。理論どころか起点すら分からない部分が多いそうだ。そこで製作者本人に魔道具師たちに説明して欲しいらしい」
ええ?そこまで分かりにくかったかな、俺の設計図。確かに独学の部分も多いから専門家からみたら分かりにくいかもだけど、ちょっと凹む。
「それをお城で?」
「ん?ああ、いや。それは魔道具工房で行ってもらうと思うよ。登城命令は多分王族や上位貴族が君を囲い込みたいんじゃないかな」
「うげぇ……」
め、めんどくさい。そんな大ごとになるなら特許申請なんてするんじゃなかったかも。
「すまない。出来るだけ製作者であるキミのことは秘密にとお願いしていたのだが、王命まで持ち出されては流石に隠し通せなかったようだ」
「お、王命ですか。それはまた随分と大仰ですね」
「それだけキミが作り出した物が凄いという事だろう。誇ると良い」
「はあ、それはどうもありがとうございます」
嬉しいような、そうでもないような。どうせならゴーレムの試作機たちを褒められたい。主にデザインとかを!といってもある程度理想の形に近づくまで世に出す気もないけれど。
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