第25話 「アーバン君。君は本当に何者なんだい?」

 「アーバン君。君は本当に何者なんだい?」


 あれから3週間。完成した次元収納の魔道具を部室に設置して、無事正常に作動することを確認していると、コーネリアがそんな事を言ってきた。


 「グランシェルド伯爵家の長男ですけど?」


 「そういう事を聞いているわけでは無いのだけれどね」


 俺は会話をしながらも使用頻度が低い魔道具から順番に次元収納の魔道具の中に放り込んでいく。

 次元収納とはその名前通りの魔法で、別次元を作りその中に物を収納できる魔法だ。ちなみに生物を入れる事は出来ない。

 本来次元収納の容量は魔法を使用する人物の魔力量に比例するのだが、この魔道具で使用するとその量は一定になる。およそ1トンほどの容量だ。

 この魔道具は魔力切れの心配がない。使用する際に使用者が魔力を流し込む仕様だ。デメリットとしては、魔力を一定以上流せない人間には使えないという事だが、これは大体どの魔道具にも当てはまる。そのボーダーラインが少し高めというだけだ。


 しかしこれは使える。実家の工房も最近は手狭だと感じていたし、ゴーレムの試作機の数々はコレの中に仕舞ってしまおう。そしてまた新しいゴーレムたちに囲まれてさらに新しいゴーレムを作るのだ!なんという幸せなゴーレムライフ。


 「それで、もう国への申請は済んだのかい?」


 俺がゴーレムライフの妄想の浸っているとコーネリアがそんな事を尋ねて来た。


 「申請ですか?」


 「……まさか、申請しないつもりかい?」


 「いや、申請って何のですか?」


 「勿論この次元収納の魔道具の特許申請のことだが?」


 特許……考えても無かった。そうか、そりゃあこの世界にもあるよな特許。

 そういえば、将来魔道具師として活動するつもりでいたけど具体的な事は特に考えてなかったな。どっかの工房にでも伯爵家のコネで入れて貰えれば良いやぐらいに考えていた。……最低だぞ、俺くん。


 それにしても特許か。使用料とかいくら位貰えるんだろう。将来ゴーレムの研究費用にもっとお金を掛けたいし、さすがに小遣いを貰い続ける訳にもいかない。案外これは良い収入源になってくれるかもしれないな。


 「あの、コーネリア先輩は特許申請の仕方って知ってます?」


 「流石に詳しくは知らないな。先ずは国に問い合わせるのが良いのだろうが、正直モノがモノだ。下手にバレたら申請の前に大変な事になりかねない。色々手回ししておくので、少しだけ待ってもらえないかな?」


 「え?お願いしちゃって良いんですか?」


 「ふふ、もちろんだよ。キミと私の仲だろう?」


 「面倒お掛けしますが、よろしくお願いします」


 「ああ、任せておいてくれ」


 正直俺にはツテなど無いし助かる。

 ここは素直にイケメン過ぎるコーネリアに頼ることにした。

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