第23話 入学から1年が経って、

 入学から1年が経って、俺は2年生になった。


 進級する際に成績によってクラスが変わるのだが、A組の面子は殆ど変化が無かった。つまり今年も俺はクラスではぼっち確定なのだろう。良いし、別に寂しくないし。


 最近は俺に剣で絡んでくるヤツが減った。……コーネリアが木剣を持ってチラチラこちらを見てくる回数は増えたが。

 代わりに変なのに絡まれた。


 「グランシェルド。光栄に思えよ、貴様を生徒会の書記にしてやろう」


 食堂でコーネリアとサリーと共に昼食を取っていた時の事である。

 突然俺に話かけてきたのは少しカールした金髪の、ぎりぎり二枚目風の優男といった感じの男子生徒だった。


 「遠慮しておきます」


 面倒くさそうだったので速攻で断った。生徒会なんぞに入ったらゴーレムをいじる時間が減ってしまうではないか。


 クラスでボッチな俺の傷を美人な先輩方との交流で癒していたのに、邪魔しないで欲しい。……最近、スケベなアーバン君が復活気味な気がする。思春期なのだからしょうがない。


 「分かるとも。本来ならば生徒会は貴様如きが入れるような場所では無いのだからな。代々王族や公爵家の皆さま、そして私のように侯爵の血を引いた者にこそふさわしい立場だ。貴様が恐縮してしまうのも仕方ない」


 ばっさぁ、と髪を掻き揚げ大袈裟に語る優男。

 侯爵も伯爵も大差ないだろう。と個人的には思うが、社交の場などでの立場は実際結構違うらしい。俺はさぼりっぱなしだったので詳しくは知らないが。


 「しかしまぁ、伯爵家の者ならば入会の資格は無くもない。貴様は中々優秀な成績を収めているそうじゃないか?特別に雑用ぐらいならさせてやっても良いのではないかという話になってね。会長たちの寛大な決定に感謝するのだな」


 書記じゃなかったのか?いつの間にか書記から雑用に降格されている。


 「それはそれは、身に余る光栄です」


 「うむうむ、そうだろう、そうだろう。それでは早速―――」


 「ですので、そのお話は辞退させていただきます」


 「―――何?」


 「何せ身に余りますから。自分如きでは到底務まりません」


 言外に面倒だから断ると伝えると、金髪の優男(そういえば、名乗っていないなコイツ)はこめかみをピクつかせていた。


 「生徒会からの誘いを断ると?」


 「自分は所詮伯爵家の人間です。歴史と名誉ある生徒会の役員にふさわしいとは到底思えません。侯爵家の血筋であらせらる貴方様の仰られる通り、生徒会は王族の方々、公爵家の方々、それと侯爵家の方々にのみに許された立場だと考えます。ですので自分の様な伯爵家の人間は改めて辞退の意を示させていただきます」


 本来、貴族が自分の爵位を卑下する様な発言はNGだ。が、俺はさっさとこの話を終わらせて食事の続きがしたいのだ。まぁ、この場合は、貴方はそれだけ失礼な発言をしたんですよ、という意味合いも含ませているのでセーフだろう。知らんけど。


 「ここまで阿呆だとは思わなかった。折角の生徒会入りの話を自ら断る馬鹿が存在するとはな。絶対に後悔することになるからなグランシェルド!!」


 金髪優男(最後まで名乗らなかったな)は激昂しながら食堂から出て行った。


 「アーバンくん。本当に良かったの?生徒会に入れば王城でのお仕事に就ける可能性も高いって聞くよ?」


 「王族との繋がりも出来るな。今期の生徒会長は第4王子様だしね」


 「どっちも遠慮します。俺は将来魔道具師になるので、余計なしがらみになりそうなので」


 「グランシェルド伯爵が聞いたら泣くんじゃないかい?」


 「そうかも知れませんね」


 ごめんよパピー。


 適当に心の中で謝りつつ、俺は食事の続きを始めた。

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