第22話 「準備は良いかい?アーバン君」
「準備は良いかい?アーバン君」
「ええ、いつでも」
部室棟の前で、俺とコーネリアは木剣を構えて対峙していた。
「それじゃあサリー、合図を頼むよ」
「うん」
サリーが返事をすると彼女の操る巨大なシロクマのぬいぐるみが一歩前に出る。
シロクマが腕を点に突き上げて、それを勢い良く振り下ろした。
「はじめ!」
合図と同時にコーネリアが地面を蹴って。こちらに一直線に駆け出す。
先ほどの男子生徒似たような動きだがスピードが段違いだ。
(流石は上級生。クラスメイトたちと比べるとかなり早いな。2人目の家庭教師ぐらいかな?)
そういえば彼は家庭教師と呼ぶと指南役と呼べと怒っていたな。後半には何故か敬語になってたけど。などと思い出しながら、コーネリアの木剣を自分の木剣で払う。
勢いよく払われて一瞬体制を崩すコーネリアだったが直ぐに体勢を立て直し2撃目3撃目と攻撃してくる。
クラス分けの時の試験官の様に型に囚われていないない分対応が少し難しい。というのも下手に反撃するとケガをさせてしまいそうなのだ。
一応回復魔法も習ってはいるが、正直人前ではあまり使いたくない。回復魔法の使い手は貴重なので取り込もうとしたり便利に使おうとしたりする輩が多いと聞いているためだ。
それに単純にコーネリアにケガをさせたくないと言う思いもある。
まぁ、剣の手合わせの最中に、そんな事を考えるのは相手に失礼だという考えも理解できるし、一応持ち合わせてもいるのだが。感情とは別の話だ。
「……手合わせ中に考え事かい?随分と余裕だね」
態度に出てしまったようだ。コーネリアに注意されてしまった。
「失礼しました。続けましょう」
「キミなら本気を出しても大丈夫そうだ。ここから本気で行かせてもらうよ」
「え?」
手加減している様には感じなかったが、どうやらコーネリアはまだ全力では無かったようだ。
「≪身体強化≫!!」
コーネリアが自身に身体強化の魔法を掛けた。
入学した後で聞いた話なのだが、身体強化の魔法が使えるのは最上級生の5年生でも一握りなんだとか。それでクラス分けの試験の時に俺が使えるといったら鼻で笑われたらしい。
それを3年生のコーネリアが使える事には素直に驚いた。
「身体強化の魔法が使えるんですね」
「あまり驚かないんだね」
「十分驚いていますよ」
「そうかい?それじゃ、その効果を実感してもっと驚いて見せてくれ!!」
初撃と同じ軌道、しかしスピードは先ほどより遥かに早い。早いのだが――
(身体強化の魔法。あまり得意ではないみたいだな)
俺やオリビエ先生が使う身体強化とは明らかに違う。
あれでは精々1.2倍くらいの力ぐらいにしかならないだろう。
(これならこちらは身体強化の魔法を使う必要は無いかな)
俺は半歩身を引いてコーネリアの斬撃を避けたあと、彼女の喉元に木剣を突きつけた。
「そ、そこまで。アーバンくんの勝ち!!」
サリーの声と同時にスノーが両手を挙げ、それを左右に振って手合わせの終わりを知らせた。
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