第21話 「アーバン君。私とも手合わせして貰えないだろうか?」

 「アーバン君。私とも手合わせして貰えないだろうか?」


 部室に着くなりコーネリアがニコニコと話しかけて来た。


 「はい?」


 「先ほどの男子生徒とのやり取りを、部室前の廊下の窓から見せて貰ったよ。実に素晴らしい動きだった!実は私は剣術が好きでね。1年生の時は武術部に所属していたんだよ。サリーが入学した時に付き添いで魔道具研究部に転部したのだけれど、今でもたまに武術部には顔を出しているんだよ」


 いつもに増して熱い口調でコーネリアが語る。


 「はあ、そうなんですね」


 「む?あまり興味がなさそうだね。あれだけの腕だ、キミだって剣術が好きなんだろう?」


 「別に好きではないですね」


 「え?嘘だろう?アレだけの腕前なのにかい?」


 「そうですね、だから手合わせとかは出来れば遠慮したいんですが」


 「そんな事言わないでさ。キミと私の仲じゃないか?1回、1回だけで良いから、ね?頼むよ」


 いつものイケメンはどこへやら、しゃがんで俺より目線を低くした上での上目遣いでのおねだりだ。ちょっとかわいい。


 「はぁ……わかりました。1回だけですよ?」


 「やった!ありがとうアーバン君!!」


 喜びを体全体で表しながら、コーネリアが抱き着いて来た。

 貴族の令嬢としてそれはどうなのだろう。

 俺だって年頃(前世は無換算)の男子なのだ、嬉しいが恥ずかしい。あ、良い匂い……


 そんな事を考えているとジト目のサリーと目が合った。違うんです。男の性なんです。けっして俺が特別スケベなわけでは無いんです。本当です。


 ゴホンと咳ばらいをしてから、コーネリアをゆっくり引き離す。


 「それじゃ、さっきクラスメイトに絡まれた部室棟の前まで移動しましょうか。あ、それと木剣は俺の分も用意してくれると助かります」


 「了解した!!」


 素晴らしく良い返事をしたコーネリアが満面の笑みで部室を走って出て行った。おそらく木剣を取りに行ったのだろう。


 はぁ……ゴーレムだけいじっていたい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る